False Islandのキャラブログ。日記ログとか絵とかネタとか色々。
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久々に本物の空を眺めて背伸びをする。遺跡外だ。
「あー、やっぱ外に来ると落ち着くわ」
『遺跡の中にだって空はあるじゃないか』
「……めっちゃ高度な魔法かけた天井なんじゃねーかって思ったら息苦しくなった」
『君って奴は変な事に対しては妙に頭が回るんだな』
抱えた杖の軽口を受け流しつつ歩く。冷たい風に息をのんで、上着の襟を引き寄せた。
今は遺跡外にある市場からの帰りだ。色とりどりのテントは既に視界の後方にあり、市場に訪れた人々の喧噪ももう聞こえて来ない。
「寒ぃなぁ、もう一枚欲しいぐらいだ」
『前の島で持っていた肩掛けを無くしてしまったのは痛かったね』
「ありゃあ結構気に入ってたんだがな。まぁ、仕方ねーよ。この島で手に入ったもんは持ち出せねーのが『きまり』だから」
『記憶が消えていないだけ御の字か』
「そういうこった。……っと、海だ」
目の前が急に開けた。見渡す限り大海原が広がっている。このあたりまでくれば、拠点まではあと半分ぐらいの道のりだった。
今日はよく晴れていて、水平線もその上に浮かぶ白い雲もはっきり見えた。こっちは確か、島の北側だったように思う。
「エルタの地より真南の方向、か」
海を目にして思わず、招待状に書かれていた文句を思い出した。
あの招待状を信じるならば『エルタの地』とやらはこの海の向こうにあるはずだ。しかしその『エルタの地』が一体どこなのか、俺にはさっぱり分からない。俺はこの世界の人間ではないからだ。
「こっちに来てから結構経つな」
『そうだね、体感時間では4ヶ月から半年ぐらいってところか。向こうではどうなってるだろう?』
「センと話した時に聞いたんだが、あっちはこっちの7倍ぐらい時間の流れが速いらしい。単純に計算するともうすぐ3年になるな。俺も32になっちまう」
『此処に来たときは28だったのにね』
「全くだ」
そうか、向こうじゃ3年も経つのか。
声に出さずに呟いて、溜息を吐く。
普通3年も前の記憶は(余程印象的か強烈でないかぎり)忘れてしまうのだろうが、幸い俺の体感時間はまだ1年にもなっていない。そのおかげで俺がこちらに飛ばされて来た時の事は、未だにはっきりと思い出せる。
「……それにしても3年ってのは結構な長さだな。この辺で少し『おさらい』すっかね。ロージャ、お前も手伝え」
『何のおさらいだ、何の』
「決まってるさ、あの野郎の事だよ。俺をこっちに飛ばした奴の事だ」
そう言ってから辺りを見回す。少し離れた所に何本か常緑樹がまとめて生えていた。
流石に直射日光に当たりながら考え事は嫌だったので、その下に避難して座り込む。ロージャを脇に立てかけてから、内ポケットに入れた手帳を引っ張り出した。黒い革の表紙はすっかり俺の手に馴染んでいる。この手帳とも長い付き合いだな、そういえば。
ペンの蓋を開けて手帳のページを捲る。まだ何も書いていない新しいページを開き、一番上に「おさらい」と書く。
「元の世界に帰る方法もちゃんと考えてっけどさ、最近どうも手詰まりでね」
『一旦原点に返る事にしたと』
「ああ。あの野郎の事を色々思い出さなきゃならねーのは癪だけど、この際仕方ねーだろ?数ヶ月前の記憶ってのは新しいとは言い辛いが……ま、書いてりゃそのうち思い出すさ。嫌でもな」
『……で、僕には君が思い出した事柄の抜けや間違いを補足しろって言いたいのかい?』
「その通りだ。よく分かってんじゃねーか相棒」
『何が相棒だ気色悪いな』
悪態をつく杖を小突きながら、白いページを前に考える。何から書き出そうか。
思い出すなら何事も最初からだ。
まずは、俺があの野郎と初めて会った時の事から考えていこう。
「あー、やっぱ外に来ると落ち着くわ」
『遺跡の中にだって空はあるじゃないか』
「……めっちゃ高度な魔法かけた天井なんじゃねーかって思ったら息苦しくなった」
『君って奴は変な事に対しては妙に頭が回るんだな』
抱えた杖の軽口を受け流しつつ歩く。冷たい風に息をのんで、上着の襟を引き寄せた。
今は遺跡外にある市場からの帰りだ。色とりどりのテントは既に視界の後方にあり、市場に訪れた人々の喧噪ももう聞こえて来ない。
「寒ぃなぁ、もう一枚欲しいぐらいだ」
『前の島で持っていた肩掛けを無くしてしまったのは痛かったね』
「ありゃあ結構気に入ってたんだがな。まぁ、仕方ねーよ。この島で手に入ったもんは持ち出せねーのが『きまり』だから」
『記憶が消えていないだけ御の字か』
「そういうこった。……っと、海だ」
目の前が急に開けた。見渡す限り大海原が広がっている。このあたりまでくれば、拠点まではあと半分ぐらいの道のりだった。
今日はよく晴れていて、水平線もその上に浮かぶ白い雲もはっきり見えた。こっちは確か、島の北側だったように思う。
「エルタの地より真南の方向、か」
海を目にして思わず、招待状に書かれていた文句を思い出した。
あの招待状を信じるならば『エルタの地』とやらはこの海の向こうにあるはずだ。しかしその『エルタの地』が一体どこなのか、俺にはさっぱり分からない。俺はこの世界の人間ではないからだ。
「こっちに来てから結構経つな」
『そうだね、体感時間では4ヶ月から半年ぐらいってところか。向こうではどうなってるだろう?』
「センと話した時に聞いたんだが、あっちはこっちの7倍ぐらい時間の流れが速いらしい。単純に計算するともうすぐ3年になるな。俺も32になっちまう」
『此処に来たときは28だったのにね』
「全くだ」
そうか、向こうじゃ3年も経つのか。
声に出さずに呟いて、溜息を吐く。
普通3年も前の記憶は(余程印象的か強烈でないかぎり)忘れてしまうのだろうが、幸い俺の体感時間はまだ1年にもなっていない。そのおかげで俺がこちらに飛ばされて来た時の事は、未だにはっきりと思い出せる。
「……それにしても3年ってのは結構な長さだな。この辺で少し『おさらい』すっかね。ロージャ、お前も手伝え」
『何のおさらいだ、何の』
「決まってるさ、あの野郎の事だよ。俺をこっちに飛ばした奴の事だ」
そう言ってから辺りを見回す。少し離れた所に何本か常緑樹がまとめて生えていた。
流石に直射日光に当たりながら考え事は嫌だったので、その下に避難して座り込む。ロージャを脇に立てかけてから、内ポケットに入れた手帳を引っ張り出した。黒い革の表紙はすっかり俺の手に馴染んでいる。この手帳とも長い付き合いだな、そういえば。
ペンの蓋を開けて手帳のページを捲る。まだ何も書いていない新しいページを開き、一番上に「おさらい」と書く。
「元の世界に帰る方法もちゃんと考えてっけどさ、最近どうも手詰まりでね」
『一旦原点に返る事にしたと』
「ああ。あの野郎の事を色々思い出さなきゃならねーのは癪だけど、この際仕方ねーだろ?数ヶ月前の記憶ってのは新しいとは言い辛いが……ま、書いてりゃそのうち思い出すさ。嫌でもな」
『……で、僕には君が思い出した事柄の抜けや間違いを補足しろって言いたいのかい?』
「その通りだ。よく分かってんじゃねーか相棒」
『何が相棒だ気色悪いな』
悪態をつく杖を小突きながら、白いページを前に考える。何から書き出そうか。
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