False Islandのキャラブログ。日記ログとか絵とかネタとか色々。
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重い瞼をやっとのことでこじ開ける。薄明にさしかかった偽の空がまず視界に入り、それについで俺達が身を寄せている大木の梢が見えた。木の葉の隙間からすみれ色の空が見える。それが建物なんかのモザイクに使う、粉々に砕いた色付きタイルのように見えて、あれは偽物だけれど綺麗だな、などと上手く働かない頭でぼんやり思った。
殺人蜂の毒がもたらした熱の影響で、昨日はよく眠れなかった。横になってからしばらく意味も無い寝返りを繰り返し、瞼の裏の暗闇を延々と眠りに向かってもがき、二、三時間ほどしてようやく眠れた。ごく浅い眠りは妙な夢の断片を幾つも幾つも、際限なく俺の目の前に引っ張り出した。それは大昔に見た市場、あの物と色と人の氾濫にそっくりだった。脳裏にちらつくのは嫌に鮮やかな色彩ばかりで、どんな夢だったのかはちっとも思い出せない。
眠っていた間はやたら汗をかいていたようだ。湿った服が肌に貼り付いて気色悪い。起きたら体を拭かなければ。ああでももう少し、横になっていたい。大体、起きるには早すぎる時間帯だ。熱に浮かされた為にこんな中途半端な時間に目覚めてしまったのだろう。
頭はまだぼうっとしていた。まだ微かに毒が残っているんだろうか。それとも単に俺が寝ぼけているだけなんだろうか。分からない。体も上手く動かなかった。首を動かすのもだるくて、俺は顔を僅かに右側に傾けたままにしておいた。目だけを動かして周りを見る。
右側に丸くなったハイダラの背中が見える。眠っているらしく、鳥の羽毛に似た白い髪と灰色の外套に包まれた肩が静かに上下していた。反対側、左の方にはちろちろと燃える炎が見えた。側にいるのはカディムか。近くにロージャが立てかけられている。内容は分からないが何か会話をしているようだった。やれやれ、ロージャの奴、大方カディムに話し相手になってくれとだだをこねたに違いない。ロージャは眠らないから、夜が暇なのは仕方がないのだけれど――。
そこまで考えたところで俺は目を閉じた。瞼の重みに耐え切れなくなったのだ。そのくせ体が火照って上手く寝付けない。ちくしょうめ、まだ熱がある。
(あ、そうだ)
思いついた。あれを試してみよう。ハイダラを起こすと悪いから声は出せない。念じるだけで呼べるかどうかは分からないが、この際やるだけやってみることにする。
(――『流れを紡ぐもの』)
本を開く。そこに呪文が書いてある。それを指でなぞりながら一字一句、慎重に読み上げる。そんな事を思い描く。
(『澱みを満たすもの/空に踊るものへと告ぐ』)
呪文が進むにつれ、周囲の気温がほんの少し下がった気がした。
いい感じだ。
(『凝り集え 私のもとに/歌い祈れ 私のため』)
冷気が俺のすぐ側に集まってくるのを感じた。
水の匂いがする。
(『お前の水を私は欲する/お前の蜜を私は欲する』――)
気配が一つ、増えた。僅かな重みを胸に感じて目を開ける。
俺の胸の上に小さな鳥がちょこんと座っていた。薄ら青い燐光を放っていて、それでいながら向こう側がはっきり透けている。こいつの体は全部水で出来ている。水霊だ。俺が水霊を呼び出すと、何故か鳥の姿で現れるのだった。これは元の世界にいた頃から変わっていない。
(しっかし、思念だけで呼び出すのはちと無理があったかね)
現れた水霊を見ながらそんな事を思う。俺が呼び出す水霊は大抵、カラスより少し大きいぐらいの大きさなのだ。しかし今日呼び出した奴は雀と同じぐらい、手の平にすっぽり収まっちまう程度の大きさだった。術の媒介が思念だけで、媒介とするには脆弱だったせいだろう。……まぁ、いいや。大きさはこのぐらいが丁度いい。
水霊に思念で軽く呼びかける。水の鳥は僅かに首を傾げてから、小さな羽音を立てて俺の顔にまで飛んで来た。頬の上に止まってから嘴で俺の前髪を払いのけ、露になった額に座り込む。腹をべったり付ける姿勢。これが普通の鳥ならば暖かい羽毛が触れるのだろうが、俺の額に座り込んだのは水霊だった。ひやりとした心地よい冷たさが額にしみる。
《……精霊を氷嚢代わりにするなんて、本当にどうしようもない術者だな》
そんな声が水霊から聞こえて来た気がしたが、直後に襲って来た猛烈な眠気のせいでそれを確認する気にも反論する気にもなれなかった。
眠気に身を任せて、目を閉じる。今度はすんなりと眠りにつけた。
寝ている間に水霊の術が解けちまって髪の毛が水浸しになってたのは、また後の話。
……そういや水霊を呼び出した時、何かもう一つ思いつきそうだったんだが……あれは一体何だったんだろう。そのうちまた、思い出せるんだろうか。
殺人蜂の毒がもたらした熱の影響で、昨日はよく眠れなかった。横になってからしばらく意味も無い寝返りを繰り返し、瞼の裏の暗闇を延々と眠りに向かってもがき、二、三時間ほどしてようやく眠れた。ごく浅い眠りは妙な夢の断片を幾つも幾つも、際限なく俺の目の前に引っ張り出した。それは大昔に見た市場、あの物と色と人の氾濫にそっくりだった。脳裏にちらつくのは嫌に鮮やかな色彩ばかりで、どんな夢だったのかはちっとも思い出せない。
眠っていた間はやたら汗をかいていたようだ。湿った服が肌に貼り付いて気色悪い。起きたら体を拭かなければ。ああでももう少し、横になっていたい。大体、起きるには早すぎる時間帯だ。熱に浮かされた為にこんな中途半端な時間に目覚めてしまったのだろう。
頭はまだぼうっとしていた。まだ微かに毒が残っているんだろうか。それとも単に俺が寝ぼけているだけなんだろうか。分からない。体も上手く動かなかった。首を動かすのもだるくて、俺は顔を僅かに右側に傾けたままにしておいた。目だけを動かして周りを見る。
右側に丸くなったハイダラの背中が見える。眠っているらしく、鳥の羽毛に似た白い髪と灰色の外套に包まれた肩が静かに上下していた。反対側、左の方にはちろちろと燃える炎が見えた。側にいるのはカディムか。近くにロージャが立てかけられている。内容は分からないが何か会話をしているようだった。やれやれ、ロージャの奴、大方カディムに話し相手になってくれとだだをこねたに違いない。ロージャは眠らないから、夜が暇なのは仕方がないのだけれど――。
そこまで考えたところで俺は目を閉じた。瞼の重みに耐え切れなくなったのだ。そのくせ体が火照って上手く寝付けない。ちくしょうめ、まだ熱がある。
(あ、そうだ)
思いついた。あれを試してみよう。ハイダラを起こすと悪いから声は出せない。念じるだけで呼べるかどうかは分からないが、この際やるだけやってみることにする。
(――『流れを紡ぐもの』)
本を開く。そこに呪文が書いてある。それを指でなぞりながら一字一句、慎重に読み上げる。そんな事を思い描く。
(『澱みを満たすもの/空に踊るものへと告ぐ』)
呪文が進むにつれ、周囲の気温がほんの少し下がった気がした。
いい感じだ。
(『凝り集え 私のもとに/歌い祈れ 私のため』)
冷気が俺のすぐ側に集まってくるのを感じた。
水の匂いがする。
(『お前の水を私は欲する/お前の蜜を私は欲する』――)
気配が一つ、増えた。僅かな重みを胸に感じて目を開ける。
俺の胸の上に小さな鳥がちょこんと座っていた。薄ら青い燐光を放っていて、それでいながら向こう側がはっきり透けている。こいつの体は全部水で出来ている。水霊だ。俺が水霊を呼び出すと、何故か鳥の姿で現れるのだった。これは元の世界にいた頃から変わっていない。
(しっかし、思念だけで呼び出すのはちと無理があったかね)
現れた水霊を見ながらそんな事を思う。俺が呼び出す水霊は大抵、カラスより少し大きいぐらいの大きさなのだ。しかし今日呼び出した奴は雀と同じぐらい、手の平にすっぽり収まっちまう程度の大きさだった。術の媒介が思念だけで、媒介とするには脆弱だったせいだろう。……まぁ、いいや。大きさはこのぐらいが丁度いい。
水霊に思念で軽く呼びかける。水の鳥は僅かに首を傾げてから、小さな羽音を立てて俺の顔にまで飛んで来た。頬の上に止まってから嘴で俺の前髪を払いのけ、露になった額に座り込む。腹をべったり付ける姿勢。これが普通の鳥ならば暖かい羽毛が触れるのだろうが、俺の額に座り込んだのは水霊だった。ひやりとした心地よい冷たさが額にしみる。
《……精霊を氷嚢代わりにするなんて、本当にどうしようもない術者だな》
そんな声が水霊から聞こえて来た気がしたが、直後に襲って来た猛烈な眠気のせいでそれを確認する気にも反論する気にもなれなかった。
眠気に身を任せて、目を閉じる。今度はすんなりと眠りにつけた。
寝ている間に水霊の術が解けちまって髪の毛が水浸しになってたのは、また後の話。
……そういや水霊を呼び出した時、何かもう一つ思いつきそうだったんだが……あれは一体何だったんだろう。そのうちまた、思い出せるんだろうか。
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