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False Islandのキャラブログ。日記ログとか絵とかネタとか色々。 キャラロールがぽんと飛び出ますので苦手な方はご注意を。



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「……あー」

 変な声が出た。脱力しきっちまって体に力が入らない。遺跡から出て久々にまともな食事にありつけたお陰で空きっ腹からは解放されたが、今はだらしなく口を半開きにして空を見上げるほかない有り様だった。
 ハイダラにはちょっとした散歩だと言ってある。ロージャはカディムに預けてきてしまった。だから、今は俺一人だ。
 昨日、遺跡外に放り出された。
 もう少し行けるかとも思っていたのだけれど、そううまくは行かなかったらしい。自分の体調を見誤るようじゃまだまだだ。……まぁ、客観的に体調管理ができた事なんてほとんどないのだけれど。
 最深部ではいよいよカエダ嬢が本気を出しているようだ。榊とかいう人の力もそろそろ限界に近いというし、ユグドラシルを相手取った大混戦も終わりが近づいているのだろう。
 それはひょっとしたら、この島での探索自体の終わりなのかもしれないが。

(……そろそろ終わっちまうのか。やだなぁ)

 そんな事を思いながら頭を掻く。指の隙間から細かな黒い羽毛がこぼれて更に気が滅入った。
 髪の毛の羽毛化はうなじで止まっていたが、体毛にはぽつぽつと羽毛が混ざるようになっていてぞっとした。犬歯も、牙と言って差し支えないぐらい鋭くなっている。歯は極力見せなければ何とかなるが、羽根はどうしようもない。この島を出たあとも残るようであれば、どうにかしてごまかすしかないだろう。榊がばら蒔いていたマナの影響下ではあまり変化はなかったし、今は既にそこから逃れているから、これは俺が好き勝手していた時のマナの侵食によるものだろう。自業自得だ。
 ハイダラがこの変化を全く気にしなかったのは、俺にとって幸運だった。彼にとっては外見に変化があることがそう不思議なことではないとしても、彼が普段通り接してくれることで俺自身はとても気が楽になった。

 もう一度ため息を吐いたところで、背後に気配を感じた。よく知っているそれは、珍しくおとなしい。
 俺は振り向かないまま、気配に向かって声をかけた。

「お久しぶりです、先生」
「……あぁ、久しいな」

 草を踏む音。近づいてきた先生は、そのまま俺の横に腰を下ろした。

「どうにか正気らしいな」
「ええ、少なくとも今は」

 そこで少し、言葉が途切れた。
 息苦しくならないうちに俺は口を開いた。

「この前は、すみませんでした。勝手な真似しちまって」

 いつ言おうか悩んでいた謝罪の言葉を、どうにかそこで切り出した。
 先生は黙っている。

「どうしても顔向けできなくて、結局外に出るまで連絡ができませんでした。ご迷惑を、おかけしました」

 少しの間沈黙が続いた。
 やがて隣で、わずかに息を吐く気配がした。

「大変だったのは確かだよ。怒りもしたさ。だが、今回の件は私とロージャの不手際でもある。お互い様だろう」
「……ありがとうございます」
「それで、レンジィ」
「はい」
「ロージャから話は聞いたか」

 話、というのは一昨日の晩聞いた、俺がこの島に来た理由の事だろう。
 詰まりそうになる声を無理矢理普段通りにして、答える。

「……はい。聞きました」
「そうか。……意外と落ち着いているな。驚かなかったのか」
「少し前から、予想はしてました。俺がこの島に来たのは自分のせいだから先に逃げろ、とか言い出してましたし」
「なるほど。だが、それでも落ち着いているように思えるぞ。……怒りはないのか? 私は、この件がお前に知れたら縁を切られるものだと思っていたんだがね」

 そう言えば、ロージャも似たような事を言ってたっけ。思わず苦笑する。

「怒っていない訳じゃありませんけど、これだけ世話になった挙げ句迷惑をかけた人達をそうそう縁切りなんてできませんよ」

 先生もつられて笑う気配がした。少し一緒に笑ってから、もう一度口を開く。

「……確かに、まだ全部に整理はつけられてません。頭ん中だってめちゃくちゃです。でも、ここで得たものもあるんです。……その点は、感謝してます」

 グラーシャの死をきっかけに俺が落ち込んだ停滞、それがこの島に来る発端になったことは確かだ。彼女が生きていたらこの島にいなかった、という可能性も相当に高い。そう思うと、ひどく辛い。
 だが、起こってしまったことは変えられない。
 変えたところでそれはただ「分岐した」だけで、なかったことになる訳じゃない。
 今抱えているもの、ここで得たものを頼りにして、進むしかない。
 そう納得出来るまでに、随分時間がかかってしまった。

 俺の言葉を聞いた先生は、またしばらく黙っていたが、やがて微かに頷いた。

「……情けない話だが、そう言ってもらえるとほっとするよ」

 ほっとしているのは俺も同じだった。先生に対して随分失礼なことをしたり言ったり、散々だったから。

「ところで、レンジィ」
「何です?」
「お前はあとどれぐらい、ここにいるつもりだ? ……終わりは近いらしいが」

 一瞬、言葉につまった。
 だがすぐに、答えが口をついて出た。

「最後まで、いるつもりです」
「ふむ」
「彼女の死を遠因にして俺はここに来た。……それなら、見届けなくちゃならないと思うんです。ここの終わりを」

 先生は小さく、そうか、とだけ答えた。

「そう言うと思ったよ。だが、何度も言ってきたがな、今度こそ無理はするな」
「はい」
「本当にまずい状況になったら言え。通信用の羽根はロージャに渡してある」
「分かりました」

 頷きながら目を閉じる。
 これから何をするべきか、よく考えなければ。







「……あ、そうだ先生」
「ん?」
「ロージャっていつまで、あの格好なんですか?」
「何だ、嫌か」
「いやその、嫌って訳じゃないんですけど、落ち着かないっつーか……」
「本来はお前が戻った時点まで、だったんだがな。お前が戻った途端に下で騒ぎに巻き込まれていたし、ロージャも楽しんでいたようだったから延長していたところだ」
「え、延長」
「……そう言えばあいつ、最近私に魔法を教えてくれとか弟子にしてくれとかぼやいていたぞ。いずれは自力で化けるつもりらしい」
「……はぁ、そんなことが……」
「まぁ、本人に言ってみたらどうだ? 十中八九嫌がると思うが」
「……目に浮かびます」


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