False Islandのキャラブログ。日記ログとか絵とかネタとか色々。
キャラロールがぽんと飛び出ますので苦手な方はご注意を。
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遺跡に入って最初の夜。
僕は拠点の端から周囲を見回して、辺りの気配を探っていた。……あいつはこの辺にはいないみたいだ。比較的入り口に近い場所だから、当たり前だけれど。
元がレンジィから派生したものだからか、僕はぼんやりと彼の気配を辿ることができる。「何となくこの辺にいる気がする」とか「何となくこの方角にいる気がする」とか、その程度の漠然とした気配でしかないが、この遺跡では通りうる道が大体決まっているから追いやすいのが救いだ。あいつの執着がこの遺跡内で済んで良かった。もしも島の外に出られたら探し出すのは難しい。
もちろん、僕の力だけではなくて、ロルの探索の術も参考にしている。術の結果については毎日短い通信が来ている。今もあいつは南に向けて移動しているらしいが、その移動速度は日に日に遅くなっているとの事だった。
これは(実際のレンジィがどんな状況なのかはひとまず置いておいて)僕らにとっては都合がいい状態だ。それだけ早く追い付ける。でないと、
そこまで考えたところで、何やら物凄い音がした。振り返るとカディムが思い切りハイダラに引っ掻かれていた。ああ、まずい!
「ハイダラ、カディム!」
二人の側まで跳んでいって、慌ててハイダラを制止する。
「ハイダラ! お願いだから、落ち着いて!!」
宥めながら、一瞬だけカディムの方に視線を向ける。頬の傷や破けた上着がすぐに元に戻るのを見て、少しだけほっとした。そんなに深くはないみたい。
ハイダラは僕を見て振り上げた手こそ下ろしたけれど、すぐにふいっと横を向いてしまった。ここ数日ハイダラはかなり口数が減っていて、僕は彼と最後に会話をしたのがいつの事なのかうまく思い出せない。あんなに遊びたがっていたロルの翼にも全く興味を示さず、今は翼どころかロル本人にも関心がない。僕自身は「攻撃をされない」という分ハイダラに認識されてはいるのだろうけれど、彼女の場合は完全にその外にあるらしい。
ハイダラの憤りの矛先が僕に向かってこない代わりに大変なのはカディムで、最近はしょっちゅう今みたいな騒ぎが起きる。カディムは「よくあることだから大丈夫」って言うけれど、最初の時は本当にびっくりした。半泣きで二人の間に割り込んで喚き散らす程度には。
ハイダラはしばらくじっとしていたけれど、そのうち何か気になるものを見つけたらしい。すぐにでも跳んでいきそうな気配になった。
「ハイダラ様!」
「シャァァアアア!!」
急いで引き止めたカディムを振り払って、威嚇みたいな声を上げるが早いか(僕は彼のそんな声を今まで聞いた事がない)、ハイダラは一跳びで手近な樹の梢に跳び移った。
――と思ったらもう次の枝に跳んでいて、あっという間に姿が見えなくなった。
僕は呆然と見送るほかない。
何でこんなことになっているのか、というのは何となく分かる。
彼は多分、レンジィを探している。正直な話、レンジィを追う上で一番精度が高いのは僕でもロルの術でもなくハイダラなのが現状で、まず真っ先にハイダラがあいつの気配を感知して走り出し、それを僕の「勘」とロルの探知の術が裏付ける状態になっている。
ただ、これが良い状況じゃないことは僕も分かっている。
ハイダラは僕らから離れすぎることはないし、戦闘の時は戻ってきてくれるけれど、それでも良い状況じゃない。何しろ彼の中ではああして駆け回ることが最優先らしく、最近は夜もろくに眠らずに跳び回っている。カディムも凄く心配している。
それもこれも全て僕の愚かな主人が原因だと思うと二人に対して本当に申し訳なくて、僕はいてもたってもいられなくなる。それなのに少しずつしか追いかけられない。もどかしい。
……いや、違う。それだけじゃなくて、本当は。
(彼だけじゃない。僕やロルだって馬鹿だ)
僕は自分では何も出来ないと思い込んで、レンジィの様子がおかしいと察した瞬間に全てロルに丸投げしてしまった。彼に一番近いのは(距離も魂も)僕であるはずなのに、彼と向き合おうとしなかった。ロルに任せれば何とかなるだろうと高をくくっていた。全部人任せだった。
杖の体だったから、なんて、言い訳にもならない。僕には言葉があったのに。
僕がもう少しちゃんとレンジィと話をしていれば、あいつの計画にもっと早く気がついたかもしれない。その準備にも気がつけたかもしれない。
僕がそうしなかったのは、ただの怠慢だ。
ロルはロルで、自分が居ればレンジィをある程度操作できるだろうと考えてしまっていた節がある。レンジィが彼女から離れて相当時間が経ってしまっている事を忘れていた。
これは長命種であるロルには分かり辛い感覚かもしれないけれど、それを差し引いたって気をつけるべきだった。彼はロルから見たら子供のような存在かもしれないが、人間の尺度で考えた場合、33歳はどう考えたって子供ではない。
そして彼女は、この島が相当特殊な場所である事も失念していた。特殊な理に支配された此処でなら弟子も師の裏を掻きうるかもしれない、という事まで想定していなかった。そして結局、この侮りをレンジィに利用されてしまった。
僕もロルも余りに配慮に欠けていて、余りに事態を小さく見積もりすぎていた。
こんなに想像力が足りない連中が何を言ったって、説得力がない。この程度じゃ狂いだしているレンジィには届かない。
何と言うか、情けなさ過ぎて泣けてくる。
カディムはしばらく、ハイダラが行ってしまった方角を途方に暮れた顔で見ていた。
少しして大きなため息をつくと、僕に向かってこう言った。
「お騒がせをして面目次第もございません。ロージャ様、お茶をおいれ致しましょうか」
「……うん」
僕は頷いて、彼の隣に腰を下ろした。
「カディム」
「?」
「僕ね、君もハイダラも大好きだよ。今更だけど。――だから、レンジィを見つけたら、手加減しないつもり」
少し経ってから放り出した僕の言葉に、カディムが微かに身じろぐ気配がした。僕は構わずに続ける。
「その時は止めないでね、僕の事」
自分の不始末は自分で何とかするしかない。
何が出来るのか、何を伝えるべきか、どうすればあいつに届くのか。……あいつを見つけるまでに、ちゃんと考えておかなければ。
その時に何が起きたとしても、全て僕らへの報いとして受けとる覚悟で。
僕は拠点の端から周囲を見回して、辺りの気配を探っていた。……あいつはこの辺にはいないみたいだ。比較的入り口に近い場所だから、当たり前だけれど。
元がレンジィから派生したものだからか、僕はぼんやりと彼の気配を辿ることができる。「何となくこの辺にいる気がする」とか「何となくこの方角にいる気がする」とか、その程度の漠然とした気配でしかないが、この遺跡では通りうる道が大体決まっているから追いやすいのが救いだ。あいつの執着がこの遺跡内で済んで良かった。もしも島の外に出られたら探し出すのは難しい。
もちろん、僕の力だけではなくて、ロルの探索の術も参考にしている。術の結果については毎日短い通信が来ている。今もあいつは南に向けて移動しているらしいが、その移動速度は日に日に遅くなっているとの事だった。
これは(実際のレンジィがどんな状況なのかはひとまず置いておいて)僕らにとっては都合がいい状態だ。それだけ早く追い付ける。でないと、
そこまで考えたところで、何やら物凄い音がした。振り返るとカディムが思い切りハイダラに引っ掻かれていた。ああ、まずい!
「ハイダラ、カディム!」
二人の側まで跳んでいって、慌ててハイダラを制止する。
「ハイダラ! お願いだから、落ち着いて!!」
宥めながら、一瞬だけカディムの方に視線を向ける。頬の傷や破けた上着がすぐに元に戻るのを見て、少しだけほっとした。そんなに深くはないみたい。
ハイダラは僕を見て振り上げた手こそ下ろしたけれど、すぐにふいっと横を向いてしまった。ここ数日ハイダラはかなり口数が減っていて、僕は彼と最後に会話をしたのがいつの事なのかうまく思い出せない。あんなに遊びたがっていたロルの翼にも全く興味を示さず、今は翼どころかロル本人にも関心がない。僕自身は「攻撃をされない」という分ハイダラに認識されてはいるのだろうけれど、彼女の場合は完全にその外にあるらしい。
ハイダラの憤りの矛先が僕に向かってこない代わりに大変なのはカディムで、最近はしょっちゅう今みたいな騒ぎが起きる。カディムは「よくあることだから大丈夫」って言うけれど、最初の時は本当にびっくりした。半泣きで二人の間に割り込んで喚き散らす程度には。
ハイダラはしばらくじっとしていたけれど、そのうち何か気になるものを見つけたらしい。すぐにでも跳んでいきそうな気配になった。
「ハイダラ様!」
「シャァァアアア!!」
急いで引き止めたカディムを振り払って、威嚇みたいな声を上げるが早いか(僕は彼のそんな声を今まで聞いた事がない)、ハイダラは一跳びで手近な樹の梢に跳び移った。
――と思ったらもう次の枝に跳んでいて、あっという間に姿が見えなくなった。
僕は呆然と見送るほかない。
何でこんなことになっているのか、というのは何となく分かる。
彼は多分、レンジィを探している。正直な話、レンジィを追う上で一番精度が高いのは僕でもロルの術でもなくハイダラなのが現状で、まず真っ先にハイダラがあいつの気配を感知して走り出し、それを僕の「勘」とロルの探知の術が裏付ける状態になっている。
ただ、これが良い状況じゃないことは僕も分かっている。
ハイダラは僕らから離れすぎることはないし、戦闘の時は戻ってきてくれるけれど、それでも良い状況じゃない。何しろ彼の中ではああして駆け回ることが最優先らしく、最近は夜もろくに眠らずに跳び回っている。カディムも凄く心配している。
それもこれも全て僕の愚かな主人が原因だと思うと二人に対して本当に申し訳なくて、僕はいてもたってもいられなくなる。それなのに少しずつしか追いかけられない。もどかしい。
……いや、違う。それだけじゃなくて、本当は。
(彼だけじゃない。僕やロルだって馬鹿だ)
僕は自分では何も出来ないと思い込んで、レンジィの様子がおかしいと察した瞬間に全てロルに丸投げしてしまった。彼に一番近いのは(距離も魂も)僕であるはずなのに、彼と向き合おうとしなかった。ロルに任せれば何とかなるだろうと高をくくっていた。全部人任せだった。
杖の体だったから、なんて、言い訳にもならない。僕には言葉があったのに。
僕がもう少しちゃんとレンジィと話をしていれば、あいつの計画にもっと早く気がついたかもしれない。その準備にも気がつけたかもしれない。
僕がそうしなかったのは、ただの怠慢だ。
ロルはロルで、自分が居ればレンジィをある程度操作できるだろうと考えてしまっていた節がある。レンジィが彼女から離れて相当時間が経ってしまっている事を忘れていた。
これは長命種であるロルには分かり辛い感覚かもしれないけれど、それを差し引いたって気をつけるべきだった。彼はロルから見たら子供のような存在かもしれないが、人間の尺度で考えた場合、33歳はどう考えたって子供ではない。
そして彼女は、この島が相当特殊な場所である事も失念していた。特殊な理に支配された此処でなら弟子も師の裏を掻きうるかもしれない、という事まで想定していなかった。そして結局、この侮りをレンジィに利用されてしまった。
僕もロルも余りに配慮に欠けていて、余りに事態を小さく見積もりすぎていた。
こんなに想像力が足りない連中が何を言ったって、説得力がない。この程度じゃ狂いだしているレンジィには届かない。
何と言うか、情けなさ過ぎて泣けてくる。
カディムはしばらく、ハイダラが行ってしまった方角を途方に暮れた顔で見ていた。
少しして大きなため息をつくと、僕に向かってこう言った。
「お騒がせをして面目次第もございません。ロージャ様、お茶をおいれ致しましょうか」
「……うん」
僕は頷いて、彼の隣に腰を下ろした。
「カディム」
「?」
「僕ね、君もハイダラも大好きだよ。今更だけど。――だから、レンジィを見つけたら、手加減しないつもり」
少し経ってから放り出した僕の言葉に、カディムが微かに身じろぐ気配がした。僕は構わずに続ける。
「その時は止めないでね、僕の事」
自分の不始末は自分で何とかするしかない。
何が出来るのか、何を伝えるべきか、どうすればあいつに届くのか。……あいつを見つけるまでに、ちゃんと考えておかなければ。
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