False Islandのキャラブログ。日記ログとか絵とかネタとか色々。
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今日の寝床は隠し通路だった。
狭い視界と周囲を取り囲む壁に息苦しさを感じながら横になる。当然ながらすぐには眠れない。眠れないから、とりとめもない思考を頭の中で転がすしか無くなる。
煉瓦を積んだ埃っぽい壁を眺めながら、気がつくと俺はまたグラーシャの事を考えていた。
此処では過去を変えられない。変えたとしても意味はない。そこまでは納得できた。彼女に執着するのではなく、彼女を見送らなければならないと言うのも分かっている。
問題は、どうすれば俺は、未練なく彼女を見送ることができるのか、という事だった。
完全に彼女の気配がなければ事は俺の内面だけで済んだだろう。だが、俺はこの島でグラーシャの気配を感じてしまっている。『澪標』がもたらす視界は時折何もない場所に光る波を映した。そこから溢れる気配は紛れもなくグラーシャのそれで、感知する度に心臓を引き毟るような痛みを感じた。
彼女はここに居る。居るのなら――会う事だってできるんじゃないか?
一度そう思ってしまったら、とても俺の内面だけで事を済ませるのは無理だった。
どうにかして彼女に会えないだろうか。死者だとしても、魂がこちらにいるのなら、どうにかして対話ぐらいはできないだろうか。そんな事ばかりが頭に浮かぶ。
死霊術や降霊術の知識や技術があれば、それこそ「どうにか」なってしまうのだろうけれど、どれも俺には欠けている。死霊術自体はこの島でも存在するようだが、それはどうも「ここで死にかけた存在の為の術」であるようで、俺が探している「死者との交信」とは違うらしい。
遺跡に入る前、思い切って先生にも尋ねてみたが、彼女も死者と交信する術は知らなかった(あまり好みではないので学ばなかったらしい)。
……どうしたものか。
寝転んだまま、視界を『澪標』に切り替える。輪郭だけが浮かび上がる黒い視界に、青白く光る波が現れる。
この力に気がついてから随分時間が経った。俺はもう、波を見るだけでそれが誰に、或いは何についた波なのかが分かるようになっている。感知できる範囲も広がった。俺は今地下1階にいるが、ここからでも地上にいる先生の波が見える、というか、分かる。
目を閉じて強く思う。目を閉じても『澪標』が解除されない限り波は消えない。その波と瞼の裏の闇に向かって思う。
出て来てくれ。見えてくれ。気配だけでもいい、例え波しか見えなかったとしても、君がそこに居ると分かるだけで俺は嬉しくて悲しくて胸が詰まりそうで仕方がないんだ!
と、視界の端――何もなかった場所に、不意に現れた波があった。
他の波よりずっと弱く、か細いが、それでもしっかりとそこに在る。
反射的に目を開けた。
(グラーシャ?)
声に出さず、唇だけで呟いた途端、波は掻き消えた。
俺は一瞬呆然として、かといって何か言う事も出来ず、知らず知らず止めていた息を吐き出して、もう一度目を閉じた。
今度は何も、現れなかった。
狭い視界と周囲を取り囲む壁に息苦しさを感じながら横になる。当然ながらすぐには眠れない。眠れないから、とりとめもない思考を頭の中で転がすしか無くなる。
煉瓦を積んだ埃っぽい壁を眺めながら、気がつくと俺はまたグラーシャの事を考えていた。
此処では過去を変えられない。変えたとしても意味はない。そこまでは納得できた。彼女に執着するのではなく、彼女を見送らなければならないと言うのも分かっている。
問題は、どうすれば俺は、未練なく彼女を見送ることができるのか、という事だった。
完全に彼女の気配がなければ事は俺の内面だけで済んだだろう。だが、俺はこの島でグラーシャの気配を感じてしまっている。『澪標』がもたらす視界は時折何もない場所に光る波を映した。そこから溢れる気配は紛れもなくグラーシャのそれで、感知する度に心臓を引き毟るような痛みを感じた。
彼女はここに居る。居るのなら――会う事だってできるんじゃないか?
一度そう思ってしまったら、とても俺の内面だけで事を済ませるのは無理だった。
どうにかして彼女に会えないだろうか。死者だとしても、魂がこちらにいるのなら、どうにかして対話ぐらいはできないだろうか。そんな事ばかりが頭に浮かぶ。
死霊術や降霊術の知識や技術があれば、それこそ「どうにか」なってしまうのだろうけれど、どれも俺には欠けている。死霊術自体はこの島でも存在するようだが、それはどうも「ここで死にかけた存在の為の術」であるようで、俺が探している「死者との交信」とは違うらしい。
遺跡に入る前、思い切って先生にも尋ねてみたが、彼女も死者と交信する術は知らなかった(あまり好みではないので学ばなかったらしい)。
……どうしたものか。
寝転んだまま、視界を『澪標』に切り替える。輪郭だけが浮かび上がる黒い視界に、青白く光る波が現れる。
この力に気がついてから随分時間が経った。俺はもう、波を見るだけでそれが誰に、或いは何についた波なのかが分かるようになっている。感知できる範囲も広がった。俺は今地下1階にいるが、ここからでも地上にいる先生の波が見える、というか、分かる。
目を閉じて強く思う。目を閉じても『澪標』が解除されない限り波は消えない。その波と瞼の裏の闇に向かって思う。
出て来てくれ。見えてくれ。気配だけでもいい、例え波しか見えなかったとしても、君がそこに居ると分かるだけで俺は嬉しくて悲しくて胸が詰まりそうで仕方がないんだ!
と、視界の端――何もなかった場所に、不意に現れた波があった。
他の波よりずっと弱く、か細いが、それでもしっかりとそこに在る。
反射的に目を開けた。
(グラーシャ?)
声に出さず、唇だけで呟いた途端、波は掻き消えた。
俺は一瞬呆然として、かといって何か言う事も出来ず、知らず知らず止めていた息を吐き出して、もう一度目を閉じた。
今度は何も、現れなかった。
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