False Islandのキャラブログ。日記ログとか絵とかネタとか色々。
キャラロールがぽんと飛び出ますので苦手な方はご注意を。
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俺は呆然として、高台から響く声を聞いていた。
榊の言葉はゴキジェートとかバルサーンとか意味不明な事ばかりだったのだが、まとめると「この島はもう終わり」なのだそうだ。
更に俺を混乱させたのは突然水着と浮き輪姿にされたことだった。周囲からも驚きの声が聞こえてくる。いきなり遺跡から引っ張り出されて水着姿にされたんじゃ無理もない。
「何コレ! 何コレ!」
同じく水着になったロージャが叫んでいる。人型でいたせいで巻き込まれたらしい。彼がうるさいのはいつもの事なので放置し、俺はハイダラを振り返った。
「えーと、ハイダラ、これは……」
「……水着、だね」
薄い紗の上下を身につけたハイダラが、困惑しながら言った。髪は後ろで三つ編みにされ、飾りできらきらしているが、そこと首元や両手以外に目立った飾りは見当たらない。殆どが腰に巻かれた外套にくっついていたからだ。
彼の隣に目をやると、そこはかとなく困った顔をしたカディムが控えていた。
「カディムは、水着にはされてない感じ?」
「いえ、上着は普段のものなのですが……それ以外は、水に濡れても差し支えのない素材にされているようでございますね」
よく見ればいつもの上着の下に覗く服は滑らかな黒い生地でできていた。そのまま下履きまで一体化しているようだ。
と、その時。
「しばしの間、流れるプールをご堪能下さいませッ!!」
榊の声が聞こえた途端、足元に涼しい感触がまとわりついた。
下を見ると温い水が足首にまで達し、徐々に水位を上げている。
「な、何だ?」
「これ、もしかして海水……?」
そこで俺はようやく、水着と浮き輪の意味を理解した。
水位は既に膝を越えている。島の南側からは次の波がやって来ていた。
あれ、そうなると
「ハイダラ、あんたの飾りって……海水大丈夫だっけ?」
「……あ」
一瞬の空白の後。
「ぎゃあ!! ど、どうしよう!! お前達! お前達!! 大丈夫か!!」
「は、ハイダラ様、落ち着かれま」
「煩いこの木偶の坊! 濡れても平気な鈍感絨毯は黙っていろ!!」
「あっ、カディムは大丈夫なの!? よ、良かった……」
「良くないロージャ!! ソレは大丈夫かもしれないが私の飾り達が……!!」
「おおお落ち着けハイダラ! まずは濡れない所に……」
「濡れない所がないよレン!! ああそうだ、塩や水に弱い子は皆すぐに外套の中に逃げるんだ! 私に挨拶しなくていいから!!」
「えっ、飾り達っていつもはハイダラに挨拶してるの!?」
「はい、飾りは皆、私と同じくしもべであったり、契約者であったりしますので、ハイダラ様へのご挨拶は欠かしません」
「そりゃ知らなかった。俺たちには聞こえないもんなんだろうなあ」
「皆のんびり会話していないで、私の足の先から髪の先まで、いっとき濡らさず逃す方法を考えてくれ!!」
慌てたり何とかハイダラを濡らさないよう試みたりしている間に、水は容赦なく打ち寄せてきて、結局俺達はまとめて島から追い出されたのだった。
参加者達が流されてからほどなく、島は海底に沈んでいった。呆れるぐらいの早さで、まるで最初から海に沈む機能がついていたような有様だ。
俺達と言えば、流されるまま海上を漂っている。
「……びっくりしたなぁ」
「……うん、びっくりした」
流されるしかないから、そんな事を言いながら島があった方を眺める他ない。
海流には緩やかながら意志が感じられ、明らかに北を目指して流れていた。そのせいか漂流という異常な状況の割に騒いでいる奴は少ない(別の意味では大騒ぎだが)。
「まさかこんな幕引きとはね。全然予想していなかったよ」
苦笑いしながらハイダラが言う。
「だよなー、最後の衣装が水着なんてさ。……とりあえず、はぐれなくて良かったぜ本当」
咄嗟にハイダラの腕を掴んだのが効を奏したか、俺達四人はどうにかまとまって流されていた。
時々はぐれかける奴もいるが。
「ちょっと待てよレンジィ! レンジィってば!」
少し離れた所に流されたロージャが叫んでいり。
呆れつつ彼の側まで泳ぎ、浮き輪ごと引っ張ってハイダラ達の所に戻る。さっきからこの繰り返しだ。ロージャは泳いだ事がないから仕方がないが、それにしても疲れる。
「やたら暴れるからだ。大人しく力抜いて流されてろよ、泳げねーんだろ?」
「だ、だって足がつかないじゃないかここ! 落ち着かないんだよ!」
「浮き輪があるだけマシだろーが! 落ち着かねーなら俺にでも掴まってろ!」
「君はやだ!」
「……悪いカディム、面倒見てやってくれ。頭痛くなって来た」
カディムがぎょっとする気配がした。ロージャはそっぽを向いたものの、そそくさと俺の体に掴まりながらカディムに近づいて行く。
やれやれ、とまた呆れた所で、聞き覚えのある声がした。
「全く、妙なことになったな」
直後、紅い影が隣に漂ってきた。俺はそっちに振り向いて――次の瞬間、吹き出した。
そうだ、この人はずっと遺跡外にいた。あの騒動でつい探し損ねてしまったが、彼女とて榊の奇術からは逃れられなかったらしい。
間髪入れず海水が飛んできた。避け切れず、俺はそれを頭から被る。
「失礼な。何を笑っている」
「だ、だって先生、その格好……!」
「あの男とか言う男の力は侮れんな、私までこのような格好をさせられる事になろうとは。おいレンジィ、私が肌を晒すことなど滅多にないぞ。崇め奉って拝めても構わんが――だから笑うな!」
また水が飛んできたがどうにも笑うのを止められない。
何しろ先生も可愛らしい水着と浮輪姿になっていて、俺は彼女のそんな姿を見た事がなかったからだ。今ならちゃんと女の子に見えなくもない。
笑い転げている俺に先生は呆れ果てた視線を向けていたが、やがて真顔に戻ってハイダラ達に向き直った。
「……今回は我々の不始末で手間をかけさせてすまなかった。こいつがあの島を無事に出られたのはあなた方のお陰だ。礼を言う」
流石に俺も、笑いが引っ込んだ。……半分以上は俺の責任でもあるし。
先生の言葉に、ハイダラは軽く頷いて答えた。
「いいよ、皆無事だったのだし。今は、それを喜ぼう」
「……そうだな、ありがとう」
先生は彼に向かって頭を下げ、息を一つ吐いて言った。
「さて、私はしばらく周りを見物してくるとするか。レンジィ、陸に着いたら合流しよう」
「あれ、飛んで先回りされないんですか?」
「海面からでは上手く飛べんし面倒だ。それよりは波に乗っていた方が遥かに楽だしな。では、また」
言うが早いが、また滑るように先生は泳いでいってしまった。
海流はひたすら進んだ。
多種多様なかつての探索者達を乗せて、北に向かっていった。
「あー、暑ぃ……」
ぼやいて両手を伸ばす。椰子の樹が作る木漏れ日が降り注いでいる。
流された末、俺達は無事北の大陸に到着した。今は流れ着いた砂浜で、ふやけた手足を乾かしている。
「何か、地味に疲れたぞ……流されるだけだったってのに」
「大分長いこと水中にいたしね、無理もないさ。まだ手足が落ち着かないよ」
「ああ、もう指の皮とかぐにゃぐにゃだし。それに比べたら、ロージャはアホみたいに元気だな」
前に視線を向けると、ロージャがカディムを引っ張って波打ち際を走り回っているのが見えた。隣にいるハイダラがおかしそうに言う。
「楽しくてしょうがないんだねぇ。あの姿で泳ぐのは初めてだったんだろう?」
「らしいけど……カディムに悪いなぁ」
ロージャはこっちに着いた途端「泳ぎ教えて!」とか言ってカディムを連れて行ってしまった。……いつもの事ながら、彼には非常に申し訳ない。
俺はため息を吐いて、それから浜辺を見回した。
あの島の探索者のうち相当数がこの浜に流されたらしい。皆浜のあちこちで思い思いの行動をしている。浜辺は騒がしいが不思議と不快感はない。ここがあの島の続きであるようで、心地良いぐらい。
だが、あの島はもう存在しない。
「……もう見えない、か」
「澪標の事? そう言えばあの島にも、波が見えていたと言っていたね」
「ああ。……流されてる最中に何度か使ってみたんだけど、島の波はすぐに見えなくなっちまった。俺程度の力じゃ追えなくなるぐらい、沈んじまったんだ」
何かが確実に終わったという感覚がある。
あの島での日々を、俺は一生忘れられないだろう。
澪標に意識を集中する。黒い視界のあちこちに見知った波が見える。その全てが今は懐かしい。
その時、俺の側を淡い波が通り過ぎた。勿論誰もいない。微かな風だけを感じた。
……ああ、そうか。君は待っていてくれるんだな。
「あのさ、ハイダラ」
「うん?」
深呼吸をして、続ける。
「……俺、やっとグラーシャにさよならが言えそうだ。十年近くかかっちまったし、今も方法は見つけられてないけど――あの人は、出来るまで待っててくれるみたいだから」
ハイダラを見る。淡い琥珀色の目が細められて、俺の方を見ている。
あの島にいる間、いつだってこの目に助けられた。真っすぐにそれを見据える。
「ここまで来られたのも、区切りが付けられるようになったのも、あんたのおかげだ。今を大事にしたいって思えるようになったのも、あんたが居てくれたからだ。――昨日も言ったけど、もう一度言わせてくれ。一緒に居てくれてありがとう、ハイダラ。俺も、あんたが大好きだ」
……あー、妙に照れちまうな! 何で素直にものを言うとこんなに照れ臭くなるんだ?
勝手に照れて頭を掻いている俺に、ハイダラはにっこり笑って頷いてくれた。それにつられて、俺も少し笑った。
「……さてと! 先生は……何かあっちでうろうろしてんな。俺も遊んでくっかねぇ! ハイダラ、あんたも一緒にどう? せっかく水着姿だし、着替える前に少し遊んでみねーか?」
「うーん、そうだね、大分日も傾いて来たし……うん、私も行くよ。皆で遊ぼう!」
「よし、そんじゃ行きますか!
……おーいロージャ、俺らも混ぜやがれー!」
”The Rest of ALIVE” False Island…finished.
Good-bye ”Rippling Blue”. See you sometime, somewhere!
榊の言葉はゴキジェートとかバルサーンとか意味不明な事ばかりだったのだが、まとめると「この島はもう終わり」なのだそうだ。
更に俺を混乱させたのは突然水着と浮き輪姿にされたことだった。周囲からも驚きの声が聞こえてくる。いきなり遺跡から引っ張り出されて水着姿にされたんじゃ無理もない。
「何コレ! 何コレ!」
同じく水着になったロージャが叫んでいる。人型でいたせいで巻き込まれたらしい。彼がうるさいのはいつもの事なので放置し、俺はハイダラを振り返った。
「えーと、ハイダラ、これは……」
「……水着、だね」
薄い紗の上下を身につけたハイダラが、困惑しながら言った。髪は後ろで三つ編みにされ、飾りできらきらしているが、そこと首元や両手以外に目立った飾りは見当たらない。殆どが腰に巻かれた外套にくっついていたからだ。
彼の隣に目をやると、そこはかとなく困った顔をしたカディムが控えていた。
「カディムは、水着にはされてない感じ?」
「いえ、上着は普段のものなのですが……それ以外は、水に濡れても差し支えのない素材にされているようでございますね」
よく見ればいつもの上着の下に覗く服は滑らかな黒い生地でできていた。そのまま下履きまで一体化しているようだ。
と、その時。
「しばしの間、流れるプールをご堪能下さいませッ!!」
榊の声が聞こえた途端、足元に涼しい感触がまとわりついた。
下を見ると温い水が足首にまで達し、徐々に水位を上げている。
「な、何だ?」
「これ、もしかして海水……?」
そこで俺はようやく、水着と浮き輪の意味を理解した。
水位は既に膝を越えている。島の南側からは次の波がやって来ていた。
あれ、そうなると
「ハイダラ、あんたの飾りって……海水大丈夫だっけ?」
「……あ」
一瞬の空白の後。
「ぎゃあ!! ど、どうしよう!! お前達! お前達!! 大丈夫か!!」
「は、ハイダラ様、落ち着かれま」
「煩いこの木偶の坊! 濡れても平気な鈍感絨毯は黙っていろ!!」
「あっ、カディムは大丈夫なの!? よ、良かった……」
「良くないロージャ!! ソレは大丈夫かもしれないが私の飾り達が……!!」
「おおお落ち着けハイダラ! まずは濡れない所に……」
「濡れない所がないよレン!! ああそうだ、塩や水に弱い子は皆すぐに外套の中に逃げるんだ! 私に挨拶しなくていいから!!」
「えっ、飾り達っていつもはハイダラに挨拶してるの!?」
「はい、飾りは皆、私と同じくしもべであったり、契約者であったりしますので、ハイダラ様へのご挨拶は欠かしません」
「そりゃ知らなかった。俺たちには聞こえないもんなんだろうなあ」
「皆のんびり会話していないで、私の足の先から髪の先まで、いっとき濡らさず逃す方法を考えてくれ!!」
慌てたり何とかハイダラを濡らさないよう試みたりしている間に、水は容赦なく打ち寄せてきて、結局俺達はまとめて島から追い出されたのだった。
参加者達が流されてからほどなく、島は海底に沈んでいった。呆れるぐらいの早さで、まるで最初から海に沈む機能がついていたような有様だ。
俺達と言えば、流されるまま海上を漂っている。
「……びっくりしたなぁ」
「……うん、びっくりした」
流されるしかないから、そんな事を言いながら島があった方を眺める他ない。
海流には緩やかながら意志が感じられ、明らかに北を目指して流れていた。そのせいか漂流という異常な状況の割に騒いでいる奴は少ない(別の意味では大騒ぎだが)。
「まさかこんな幕引きとはね。全然予想していなかったよ」
苦笑いしながらハイダラが言う。
「だよなー、最後の衣装が水着なんてさ。……とりあえず、はぐれなくて良かったぜ本当」
咄嗟にハイダラの腕を掴んだのが効を奏したか、俺達四人はどうにかまとまって流されていた。
時々はぐれかける奴もいるが。
「ちょっと待てよレンジィ! レンジィってば!」
少し離れた所に流されたロージャが叫んでいり。
呆れつつ彼の側まで泳ぎ、浮き輪ごと引っ張ってハイダラ達の所に戻る。さっきからこの繰り返しだ。ロージャは泳いだ事がないから仕方がないが、それにしても疲れる。
「やたら暴れるからだ。大人しく力抜いて流されてろよ、泳げねーんだろ?」
「だ、だって足がつかないじゃないかここ! 落ち着かないんだよ!」
「浮き輪があるだけマシだろーが! 落ち着かねーなら俺にでも掴まってろ!」
「君はやだ!」
「……悪いカディム、面倒見てやってくれ。頭痛くなって来た」
カディムがぎょっとする気配がした。ロージャはそっぽを向いたものの、そそくさと俺の体に掴まりながらカディムに近づいて行く。
やれやれ、とまた呆れた所で、聞き覚えのある声がした。
「全く、妙なことになったな」
直後、紅い影が隣に漂ってきた。俺はそっちに振り向いて――次の瞬間、吹き出した。
そうだ、この人はずっと遺跡外にいた。あの騒動でつい探し損ねてしまったが、彼女とて榊の奇術からは逃れられなかったらしい。
間髪入れず海水が飛んできた。避け切れず、俺はそれを頭から被る。
「失礼な。何を笑っている」
「だ、だって先生、その格好……!」
「あの男とか言う男の力は侮れんな、私までこのような格好をさせられる事になろうとは。おいレンジィ、私が肌を晒すことなど滅多にないぞ。崇め奉って拝めても構わんが――だから笑うな!」
また水が飛んできたがどうにも笑うのを止められない。
何しろ先生も可愛らしい水着と浮輪姿になっていて、俺は彼女のそんな姿を見た事がなかったからだ。今ならちゃんと女の子に見えなくもない。
笑い転げている俺に先生は呆れ果てた視線を向けていたが、やがて真顔に戻ってハイダラ達に向き直った。
「……今回は我々の不始末で手間をかけさせてすまなかった。こいつがあの島を無事に出られたのはあなた方のお陰だ。礼を言う」
流石に俺も、笑いが引っ込んだ。……半分以上は俺の責任でもあるし。
先生の言葉に、ハイダラは軽く頷いて答えた。
「いいよ、皆無事だったのだし。今は、それを喜ぼう」
「……そうだな、ありがとう」
先生は彼に向かって頭を下げ、息を一つ吐いて言った。
「さて、私はしばらく周りを見物してくるとするか。レンジィ、陸に着いたら合流しよう」
「あれ、飛んで先回りされないんですか?」
「海面からでは上手く飛べんし面倒だ。それよりは波に乗っていた方が遥かに楽だしな。では、また」
言うが早いが、また滑るように先生は泳いでいってしまった。
海流はひたすら進んだ。
多種多様なかつての探索者達を乗せて、北に向かっていった。
「あー、暑ぃ……」
ぼやいて両手を伸ばす。椰子の樹が作る木漏れ日が降り注いでいる。
流された末、俺達は無事北の大陸に到着した。今は流れ着いた砂浜で、ふやけた手足を乾かしている。
「何か、地味に疲れたぞ……流されるだけだったってのに」
「大分長いこと水中にいたしね、無理もないさ。まだ手足が落ち着かないよ」
「ああ、もう指の皮とかぐにゃぐにゃだし。それに比べたら、ロージャはアホみたいに元気だな」
前に視線を向けると、ロージャがカディムを引っ張って波打ち際を走り回っているのが見えた。隣にいるハイダラがおかしそうに言う。
「楽しくてしょうがないんだねぇ。あの姿で泳ぐのは初めてだったんだろう?」
「らしいけど……カディムに悪いなぁ」
ロージャはこっちに着いた途端「泳ぎ教えて!」とか言ってカディムを連れて行ってしまった。……いつもの事ながら、彼には非常に申し訳ない。
俺はため息を吐いて、それから浜辺を見回した。
あの島の探索者のうち相当数がこの浜に流されたらしい。皆浜のあちこちで思い思いの行動をしている。浜辺は騒がしいが不思議と不快感はない。ここがあの島の続きであるようで、心地良いぐらい。
だが、あの島はもう存在しない。
「……もう見えない、か」
「澪標の事? そう言えばあの島にも、波が見えていたと言っていたね」
「ああ。……流されてる最中に何度か使ってみたんだけど、島の波はすぐに見えなくなっちまった。俺程度の力じゃ追えなくなるぐらい、沈んじまったんだ」
何かが確実に終わったという感覚がある。
あの島での日々を、俺は一生忘れられないだろう。
澪標に意識を集中する。黒い視界のあちこちに見知った波が見える。その全てが今は懐かしい。
その時、俺の側を淡い波が通り過ぎた。勿論誰もいない。微かな風だけを感じた。
……ああ、そうか。君は待っていてくれるんだな。
「あのさ、ハイダラ」
「うん?」
深呼吸をして、続ける。
「……俺、やっとグラーシャにさよならが言えそうだ。十年近くかかっちまったし、今も方法は見つけられてないけど――あの人は、出来るまで待っててくれるみたいだから」
ハイダラを見る。淡い琥珀色の目が細められて、俺の方を見ている。
あの島にいる間、いつだってこの目に助けられた。真っすぐにそれを見据える。
「ここまで来られたのも、区切りが付けられるようになったのも、あんたのおかげだ。今を大事にしたいって思えるようになったのも、あんたが居てくれたからだ。――昨日も言ったけど、もう一度言わせてくれ。一緒に居てくれてありがとう、ハイダラ。俺も、あんたが大好きだ」
……あー、妙に照れちまうな! 何で素直にものを言うとこんなに照れ臭くなるんだ?
勝手に照れて頭を掻いている俺に、ハイダラはにっこり笑って頷いてくれた。それにつられて、俺も少し笑った。
「……さてと! 先生は……何かあっちでうろうろしてんな。俺も遊んでくっかねぇ! ハイダラ、あんたも一緒にどう? せっかく水着姿だし、着替える前に少し遊んでみねーか?」
「うーん、そうだね、大分日も傾いて来たし……うん、私も行くよ。皆で遊ぼう!」
「よし、そんじゃ行きますか!
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