False Islandのキャラブログ。日記ログとか絵とかネタとか色々。
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階段を降りている。この島に来て初めての、地下ニ階に降りる階段だ。少し緊張しながら降りる。
周りを見回すと、皆黙って歩いていた。ここの所口数が少ないのは緊張からだけではないだろう。とうとうここまで来てしまった、という気配だ。
(……気ぃ遣わせちまってるなぁ)
数日前に俺がとった振る舞いを思い出す度、強い自己嫌悪に陥る。それでも、もう後戻りする訳にはいかない。ここまで来てしまった以上は、尚更だ。
「宝玉を取りに行きたいんだけど、駄目かな?」
俺が宝玉の回収を提案したのは数日前、遺跡外で夜営をしていた時だった。
市場での買い出しと食事の後、皆の(特に先生の)気が緩んできた時を狙って切り出した。卑怯だとは思ったが、そうせずにはいられなかった。
俺がやろうとしていることをハイダラ達は察しているだろうし、多分先生も感づいている(俺のいない時、ロージャなんかに話を聞く機会はいくらでもあったはずだ)。だから先手を打っておきたかった。
俺の言葉に、一瞬その場の空気が固くなった。
「ええと、レン」
最初に口を開いたのはハイダラだった。
「それは2階に降りる、と言う事だよね?」
「ああ」
俺は簡単に相槌をうって、すぐにこう続ける。
「今回は5つ、同じところに埋まってるんだってな。……そりゃ場所は遠いけどさ、今の俺らなら、何とかなると思うんだ」
何でもない事のように、わざと軽い声で言った。それでもまだ周囲の空気には固さが残っていて、やたらと俺の声は浮いて聞こえた。
ハイダラは一瞬両の眼を見開いてから、すぐに伏せた。細い顎に手を添えて、何か考え込んでいる様子だったが、やがて側に控えていたカディムに振り返りつつ言った。
「まずは実際の地形を見た方がいいね。カディム、地図を」
「御意」
すぐに地図が広げられた。日に日に更新されていく不思議な地図の、1階と2階の分を並べる。
しばらく地図を眺めていたハイダラは、少し困った様子で俺の方を見た。
「本当、少し遠いね。長丁場になりそうだけれど……物資や体力は足りるかな」
「まぁ、確かにその辺は不安だな。だけど一つ目か二つ目の魔方陣で一旦外に出れば、何とかなると思うぜ?」
「物資面はそれで大丈夫かも知れない。だけど、この辺りは地形もかなり厳しそうだよ。しばらく森が続くし、2階に降りてからは床ばかりだ。今までよりずっと手強い相手が出るようになるだろうし――この辺りには、ベルクレアの連中がいるという話も聞く」
無数の指輪と腕輪に彩られた白い手が、2階への階段付近に固まる深い森と、その先に続く床をなぞり、やがて平原地帯の端で止まった。
「今はまだ、我々の力では難しい。様子見をしていた方がいいと思うよ?」
「様子見」
「そう、我々はまだ2階に降りたことがないから――手始めに、平原か砂地で始まるところにしてみない? そちらで下の階の様子を見て、ベルクレアに対する体勢も整えて、それから向かってもいいんじゃないかな」
俺はすぐには彼の言葉に答えず、黙って目の前の地図を見ているフリをした。
その辺りに騎士団の連中がいると言う話は勿論、俺も聞いていた。寧ろ逆に、会って聞いてみたい事がある。宝玉に一番近い位置にいるこいつらなら、ギルやシズク達よりも何かを知っているかもしれないし。
と、視界の端で何かちかちかと光るものが見えた。次いでロージャが、俺に向かって文句を垂れるのが聞こえてくる。
『そうだぞレンジィ、あまり無茶を言うな』
「そうか?」
ちょっと頭に血が上りそうになるのを抑えて(自分の言っている事がわがままである事ぐらいは自覚している)、いつも通りの声色を作る。
「すごく慎重に行けば大丈夫だと思うけどなぁ」
『森の中でも結構危険な区域に2回も入るんだぞ』
「だからなるべく、一度に沢山の敵に会わないように進む。流石に二対一なら多少は何とかなるだろ」
『普通の敵はそれで良くても、ベルクレアの連中はどうする。八人ぐらいいるって聞いたぞ? こっちは実質二人しかいないんだし、ギル達の時みたいにはいかないだろ!』
「人数まで割れてんなら、どんな戦い方をするか、どんな事に弱いか、そういう情報だって漏れてるはずだ。こいつらは魔法陣に近い位置にいるし、対策を練れば二人でも負けるとは限らねーんじゃねーか?」
俺がそう言うと、ロージャはイライラした様子で光りだした。
甲高い声と眩しい光が、やたら耳と目に障る。やかましい奴だ。
『ああもう、ああ言えばこう言って……変なところで楽観的なんだから! カディムも何か言ってやってよ!』
「い、いえ、私はそのような……」
急に話を振られたカディムが狼狽して頭を下げる。無茶振りも良いところだ。カディムは明らかに困っている。
……だがそれでも、彼も今回の話に賛成しかねているのは何となく分かった。
俺が次の出方を考えていると、それまで黙っていた先生が急に口を開いた。
「レンジィ」
「何です」
先生の紅い目と視線が合った。彼女は、ほとんど睨みつけるような目付きで俺を見ていた。表情の厳しさと対照的に、声はやたらと冷静だった。
「お前が危険な場所に行くと言う事は、お前と組んでいるハイダラ達まで危険に晒す事に他ならん。その自覚はあるのだろうな」
「あります」
俺が即答したのが、先生はよほど意外だったらしい。幼い顔が唖然とするのを見て胸が透くように思う。いつもはこっちがそういう顔をさせられているし。
「全部、俺の都合です。ハイダラ達に迷惑をかけている事も自覚しています。でも俺は、これ以上我慢が出来ない」
「……我慢するしないの問題ではなかろう」
「そういう問題なんです。俺がもうおかしくなっているのは、とうにご存知でしょう」
そう言いながら吐いた俺の息は相変わらず白い(最近気がついた事だが、俺が不安定な気分になった時により白く凍るようだった)。
先生が次にまた何か言うよりも早く、俺はハイダラの方に向き直って言葉を続けた。
「悪い、ハイダラ。こんな事になっちまってさ。――俺は、凄く弱い。宝玉に向かうには全然力が足りない。……だから、出来るならあんたとカディムの力を貸りたい。勝手ばかり言ってるのは、分かってる。どうしても無理ならその時は、一人で行く」
ハイダラはすぐには答えなかった。答えるのを躊躇っているようにも、迷っているようにも見えた。
そこで先生が言葉を挟んできた。
「何故、そこまでする」
「そうせざるを得ないからです」
「そこまでして宝玉を手に入れて、お前は何をする気だ?」
「言えません」
茶番だと思う。お互い相手の心根は分かりきっているのにはぐらかしている。けれど、明言するのとしないのとでは大きな違いがある。いくら先生が俺の意図に感づいていたとしても、わざわざ言質を与えてやる必要はない。
この島で探索を進めているのは俺とハイダラだ。外から来ているだけの先生はこの島の理に食い込むことができない。だから、今回問題になるのは彼女ではなかった。
俺はもう一度ハイダラの方を見た。それから、彼に向かって深く頭を下げた。
「ハイダラ、俺――どうしても、宝玉を手に入れなきゃならねーんだ。……だから、頼む。手伝ってくれないか」
頭を下げていたから、彼の表情は判らなかった。ハイダラが答えるまでの時間は、多分そんなに長い時間ではなかったはずだ。けれど、その時の俺にはとても長く感じた。
少ししてあの、しゃらしゃらという涼やかな音がして、俺の肩に何かが触れた。それがハイダラの細い手だと気がつくのに、少し時間がかかった。
「顔を上げて、レン」
「ハイダラ、」
「宝玉を取りに行こう。私も一緒に行く。君を手伝うよ」
「――本当か?」
顔を上げると、すぐ前に彼の顔があった。淡い琥珀色の目は真剣そのもので、思わず、腹の底まで(頼み込めばハイダラは首を縦に振ってくれるんじゃないかと思っていた俺の汚い所も全部)見透かされたような気分になって、俺は次の言葉が出てこなかった。
ハイダラは真っすぐにこっちを見たまま、静かな声で続けた。
「けれど、一つ約束して。絶対に無茶はしないって。君一人だけで何とかしようとしないでくれ。その為に私達は互いが居るのだから」
その声には心配の色が滲み出ていて、俺は今更浮かんできた罪悪感に溜息を吐いた。耐えきれなくなって目を伏せる。
「……ああ、分かった。約束する」
そう頷きながらも俺は、いつか近いうちにそれを破ってしまうかもしれないと、ぼんやり考えていたのだった。
周りを見回すと、皆黙って歩いていた。ここの所口数が少ないのは緊張からだけではないだろう。とうとうここまで来てしまった、という気配だ。
(……気ぃ遣わせちまってるなぁ)
数日前に俺がとった振る舞いを思い出す度、強い自己嫌悪に陥る。それでも、もう後戻りする訳にはいかない。ここまで来てしまった以上は、尚更だ。
「宝玉を取りに行きたいんだけど、駄目かな?」
俺が宝玉の回収を提案したのは数日前、遺跡外で夜営をしていた時だった。
市場での買い出しと食事の後、皆の(特に先生の)気が緩んできた時を狙って切り出した。卑怯だとは思ったが、そうせずにはいられなかった。
俺がやろうとしていることをハイダラ達は察しているだろうし、多分先生も感づいている(俺のいない時、ロージャなんかに話を聞く機会はいくらでもあったはずだ)。だから先手を打っておきたかった。
俺の言葉に、一瞬その場の空気が固くなった。
「ええと、レン」
最初に口を開いたのはハイダラだった。
「それは2階に降りる、と言う事だよね?」
「ああ」
俺は簡単に相槌をうって、すぐにこう続ける。
「今回は5つ、同じところに埋まってるんだってな。……そりゃ場所は遠いけどさ、今の俺らなら、何とかなると思うんだ」
何でもない事のように、わざと軽い声で言った。それでもまだ周囲の空気には固さが残っていて、やたらと俺の声は浮いて聞こえた。
ハイダラは一瞬両の眼を見開いてから、すぐに伏せた。細い顎に手を添えて、何か考え込んでいる様子だったが、やがて側に控えていたカディムに振り返りつつ言った。
「まずは実際の地形を見た方がいいね。カディム、地図を」
「御意」
すぐに地図が広げられた。日に日に更新されていく不思議な地図の、1階と2階の分を並べる。
しばらく地図を眺めていたハイダラは、少し困った様子で俺の方を見た。
「本当、少し遠いね。長丁場になりそうだけれど……物資や体力は足りるかな」
「まぁ、確かにその辺は不安だな。だけど一つ目か二つ目の魔方陣で一旦外に出れば、何とかなると思うぜ?」
「物資面はそれで大丈夫かも知れない。だけど、この辺りは地形もかなり厳しそうだよ。しばらく森が続くし、2階に降りてからは床ばかりだ。今までよりずっと手強い相手が出るようになるだろうし――この辺りには、ベルクレアの連中がいるという話も聞く」
無数の指輪と腕輪に彩られた白い手が、2階への階段付近に固まる深い森と、その先に続く床をなぞり、やがて平原地帯の端で止まった。
「今はまだ、我々の力では難しい。様子見をしていた方がいいと思うよ?」
「様子見」
「そう、我々はまだ2階に降りたことがないから――手始めに、平原か砂地で始まるところにしてみない? そちらで下の階の様子を見て、ベルクレアに対する体勢も整えて、それから向かってもいいんじゃないかな」
俺はすぐには彼の言葉に答えず、黙って目の前の地図を見ているフリをした。
その辺りに騎士団の連中がいると言う話は勿論、俺も聞いていた。寧ろ逆に、会って聞いてみたい事がある。宝玉に一番近い位置にいるこいつらなら、ギルやシズク達よりも何かを知っているかもしれないし。
と、視界の端で何かちかちかと光るものが見えた。次いでロージャが、俺に向かって文句を垂れるのが聞こえてくる。
『そうだぞレンジィ、あまり無茶を言うな』
「そうか?」
ちょっと頭に血が上りそうになるのを抑えて(自分の言っている事がわがままである事ぐらいは自覚している)、いつも通りの声色を作る。
「すごく慎重に行けば大丈夫だと思うけどなぁ」
『森の中でも結構危険な区域に2回も入るんだぞ』
「だからなるべく、一度に沢山の敵に会わないように進む。流石に二対一なら多少は何とかなるだろ」
『普通の敵はそれで良くても、ベルクレアの連中はどうする。八人ぐらいいるって聞いたぞ? こっちは実質二人しかいないんだし、ギル達の時みたいにはいかないだろ!』
「人数まで割れてんなら、どんな戦い方をするか、どんな事に弱いか、そういう情報だって漏れてるはずだ。こいつらは魔法陣に近い位置にいるし、対策を練れば二人でも負けるとは限らねーんじゃねーか?」
俺がそう言うと、ロージャはイライラした様子で光りだした。
甲高い声と眩しい光が、やたら耳と目に障る。やかましい奴だ。
『ああもう、ああ言えばこう言って……変なところで楽観的なんだから! カディムも何か言ってやってよ!』
「い、いえ、私はそのような……」
急に話を振られたカディムが狼狽して頭を下げる。無茶振りも良いところだ。カディムは明らかに困っている。
……だがそれでも、彼も今回の話に賛成しかねているのは何となく分かった。
俺が次の出方を考えていると、それまで黙っていた先生が急に口を開いた。
「レンジィ」
「何です」
先生の紅い目と視線が合った。彼女は、ほとんど睨みつけるような目付きで俺を見ていた。表情の厳しさと対照的に、声はやたらと冷静だった。
「お前が危険な場所に行くと言う事は、お前と組んでいるハイダラ達まで危険に晒す事に他ならん。その自覚はあるのだろうな」
「あります」
俺が即答したのが、先生はよほど意外だったらしい。幼い顔が唖然とするのを見て胸が透くように思う。いつもはこっちがそういう顔をさせられているし。
「全部、俺の都合です。ハイダラ達に迷惑をかけている事も自覚しています。でも俺は、これ以上我慢が出来ない」
「……我慢するしないの問題ではなかろう」
「そういう問題なんです。俺がもうおかしくなっているのは、とうにご存知でしょう」
そう言いながら吐いた俺の息は相変わらず白い(最近気がついた事だが、俺が不安定な気分になった時により白く凍るようだった)。
先生が次にまた何か言うよりも早く、俺はハイダラの方に向き直って言葉を続けた。
「悪い、ハイダラ。こんな事になっちまってさ。――俺は、凄く弱い。宝玉に向かうには全然力が足りない。……だから、出来るならあんたとカディムの力を貸りたい。勝手ばかり言ってるのは、分かってる。どうしても無理ならその時は、一人で行く」
ハイダラはすぐには答えなかった。答えるのを躊躇っているようにも、迷っているようにも見えた。
そこで先生が言葉を挟んできた。
「何故、そこまでする」
「そうせざるを得ないからです」
「そこまでして宝玉を手に入れて、お前は何をする気だ?」
「言えません」
茶番だと思う。お互い相手の心根は分かりきっているのにはぐらかしている。けれど、明言するのとしないのとでは大きな違いがある。いくら先生が俺の意図に感づいていたとしても、わざわざ言質を与えてやる必要はない。
この島で探索を進めているのは俺とハイダラだ。外から来ているだけの先生はこの島の理に食い込むことができない。だから、今回問題になるのは彼女ではなかった。
俺はもう一度ハイダラの方を見た。それから、彼に向かって深く頭を下げた。
「ハイダラ、俺――どうしても、宝玉を手に入れなきゃならねーんだ。……だから、頼む。手伝ってくれないか」
頭を下げていたから、彼の表情は判らなかった。ハイダラが答えるまでの時間は、多分そんなに長い時間ではなかったはずだ。けれど、その時の俺にはとても長く感じた。
少ししてあの、しゃらしゃらという涼やかな音がして、俺の肩に何かが触れた。それがハイダラの細い手だと気がつくのに、少し時間がかかった。
「顔を上げて、レン」
「ハイダラ、」
「宝玉を取りに行こう。私も一緒に行く。君を手伝うよ」
「――本当か?」
顔を上げると、すぐ前に彼の顔があった。淡い琥珀色の目は真剣そのもので、思わず、腹の底まで(頼み込めばハイダラは首を縦に振ってくれるんじゃないかと思っていた俺の汚い所も全部)見透かされたような気分になって、俺は次の言葉が出てこなかった。
ハイダラは真っすぐにこっちを見たまま、静かな声で続けた。
「けれど、一つ約束して。絶対に無茶はしないって。君一人だけで何とかしようとしないでくれ。その為に私達は互いが居るのだから」
その声には心配の色が滲み出ていて、俺は今更浮かんできた罪悪感に溜息を吐いた。耐えきれなくなって目を伏せる。
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