False Islandのキャラブログ。日記ログとか絵とかネタとか色々。
キャラロールがぽんと飛び出ますので苦手な方はご注意を。
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今日は久々に、ハイダラ達と離れて過ごす夜になった。
この拠点には今、俺とロージャと先生しかいない。
「久しぶりだな、お前と二人だと言うのも」
拠点の焚き火の前、俺の隣で羽を伸ばしていた先生がそんな風に言う。今日はまだ「ねぐら」に入る気はなさそうだった。
先生は流石に俺達に混じって雑魚寝という訳にも行かないので(一応女性ではあるし)得意の空間を弄る魔法で「ねぐら」を作り、そこで睡眠を取っていた。「ねぐら」は俺達のいるところからは見えない。この島とは空間自体が繋がっていないらしい。
俺は先生の言葉に頷きながら、薪を焚き火に放り込んだ。
「そうですね、しばらくお会いしてませんでしたし」
「おかげでお前の情けない失態も見られた訳だ」
「……まだ傷が癒えてないので突っ込まないでくれませんかそこは」
うっかり俺がヘッドルーツを投げ捨てたことを言われている。……何で荷物が一杯だと拾ったもんを猛然と投げ捨てたくなるんだろう。それもこの島の「決まり」なのだろうが、実際に体感するとかなり痛い。
先生はしょげている俺を見てしばらくにやにやしていたが、突然何か思いついたように、こっちに身を乗り出してきた。
俺の上着にさしてある、赤紫色をした羽根を見つめて呟く。
「丁度半分くらいか」
「……もうそんなに?」
「塵も積もればなんとやら、だ」
それは昨日もらった先生の羽根だ。
こいつは俺に魔力を供給し続ける一方、周りに振り撒かれてる俺の力と、羽根に残っている魔力の量に反応して紅から青に変色する仕掛けが施されている。
羽根は今、中央まで紫色になっていた。上端はもうすっかり青だ。丸一日で半分となると少し進度が早い気がする。
「良くないことなんですよね、これ」
「当たり前だ。術の制御がまともに働いていないことになるのだからな」
「……ええと、どういう意味です?」
「お前、こちらに来て新しい術を覚えただろう。うろ……何とか言ったか? 向こうにいたときはなかった気配がするぞ」
「雨露霜雪、ですね」
俺が頷くと先生は「それだそれ」と言って続けた。
「今のお前からはほんの少しずつではあるが、その気配がにじみ出している」
「え?」
「お前の周りにいると少しだけ寒さを感じる。本当に僅かな冷却だから生物は影響を受けないが、呼気は粒子が細かいから大きく影響を受けたのだろう。息が凍るのはそのせいだ。それからこれは一昨日お前を運んだ時に気がついたことだが、今のお前は普通の人間より体温が下がっているぞ。気がついていたか?」
俺は黙って首を振った。息が白く凍るのは分かっていたが、体温までは注意が向いていなかった。最近妙に朝が辛いとは思っていたが、そう言うことか。
「それは俺が雨露霜雪の制御をしきれていないからですか?」
「制御が乱れていると言った方がいいかも知れんな。普段なら戦闘以外では抑えておけるはずの術が、上手く抑えられずに漏れだしているようだ。それは水や氷を操る術だろう」
「はい」
「となると一番身近な『水』として、呼気に含まれる水蒸気を優先的に凍らせている、という考え方もできる」
「身近な水、ねぇ。……体液は凍ってないですが、それはどう説明します?」
「それは不純物が多くて厳密に『水』と定義し辛いためかもしれん。あるいは、外に向かって術を発散しているから、お前の体そのものは術の対象外になっている、という可能性もある。どれも仮説に過ぎんがな」
そう言って先生は肩を竦めた。先生に分からないことが俺に分かる訳もない。だから俺も苦笑いするしかない。
「ともあれ、どのような形態だとしても術を使う時は魔力を使う時だ。不必要な術のために不必要に魔力を消費している。それが今お前が置かれている状況だよ。……しかし、本当の問題はもう少し前にあるようだな」
言いながら先生は、近くにあった枝を無造作に焚き火へ投げ込んだ。
ぱちん、と、枝がはぜる音がいやに大きく聞こえた。
「それは『何故今まで制御できていたことができなくなったか』だ。その術は今までは問題なく制御できていたんだろう?」
「ええ」
「となると、原因は術ではなく術者にあると見るべきだ。魔法や術の類は世界を騙すものだ。術者の持ちうるあらゆるものを使って世界の法則をねじ曲げる。その中で魔力と並んで最も必要とされるのは、術者の精神力だ。ここが乱れてはどうにもならん。……さて、レンジィ」
「何です?」
「お前、何をやらかす気だ」
思わず、息を止めた。
彼女が言わんとしていることに、その瞬間思い当たったからだ。
「何の、話ですか」
「とぼけるな。私には通じんぞ」
先生の声は、ほとんど叱責と言ってもいいくらいに鋭い。
「もう随分前になるが――私が以前、お前に『連れて帰ってやろうか』と言った時、お前がどう答えたか、覚えているか?」
「さぁ、いつの事やら」
「覚えていないのなら教えてやる。お前は『ここにいたらあの人に会う術が見つかるかもしれない』と言っていた。――お前の事だ、今もそれは変わっていないのだろう?」
変わるはずがない。
先生が言った事も本当は覚えている。
「先生」
「何だ」
「もしも以前亡くしてしまった大事な人が、実はずっと側にいたとしたら、貴女だったらどうします?」
「……それは、今のお前の事か? そのせいでまともに術も使えなくなっていると?」
先生の声には困惑が混じっていて、俺は思わず笑ってしまう。
先生は『彼女』の気配に気がついているんだろうか?
今は、俺も感じないけれど。
「ただの例え話ですよ。――で、どうなんですか」
俺が更に問うと、先生はふん、と息を吐いて答えた。
「決まっている。見守ってくれているのなら、それに恥じぬ生き方を心得るさ」
「恨まれていたとしたら?」
「同じことだ。生きて誠意を見せる。恨まれる理由が分かるのなら償うよう努力する」
「……それがもう、どうしようもない事であっても?」
「ああ。生者は死者の分まで生きる義務があると言うのが私の考えだ。大事な人の後を追って死ぬだとか一生死んだような生活を送るとか、そんな事は償いでも何でもない」
先生の回答を聞きながら、ああやっぱり、と、俺は落胆に近い気持ちを抱いていた。
先生はとても強い人だ。彼女みたいな回答は、当面俺には返せそうにない。
「……俺には無理ですよ、先生」
「何がだ。グラーシャの事か」
「…………」
「彼女を忘れろとは言わん。だが、もう何年経ったと思っている? いい加減立ち直るべきだろう。これでは彼女も浮かばれん」
そう、あの人はまだ浮かばれていない。
あの人はこちら側にいる。
先生はイライラとした様子で続けている。
「……あまりしつこいと、レンジィ。お前が執着しているものが本当に彼女の死なのかどうかを疑わざるを得なくなるぞ」
「どういう意味、ですか」
「お前がとらわれているのは本当に彼女の死なのか? 私には時々、お前が自分の感情にしがみついているだけのようにも見えるのだがな」
違う。
そう言いたかったけれど、声が出なかった。
先生が言った事は、実は俺もずっと恐怖を感じていたことだったからだ。
つまり、俺は本当はグラーシャを失った事を悲しんでいるのではなくて、ただ自分の感情に浸っていたいだけなんじゃないか、と。
その時の俺は、とにかく酷い顔をしていたらしい。
「――すまん、言い過ぎた」
先生が溜め息をつきながら言うのが、とても遠い声に聞こえた。周りの事にまるで現実感がない。色々な感覚が麻痺してしまったように感じる。
彼女が弟子である俺に詫びる事なんて滅多にないのに、ああ珍しく先生が謝っているな、とか、その程度にしか感じない。
こんな状態だったから、その後の先生の言葉も半ば上の空で聞いていた。
「……だが、忘れるなよレンジィ。もしもお前が妙な事を言い出したら、その時は」
先生はそこで言葉を切って、残りを心底嫌そうに続けた。
「その時は、お前の手足をへし折ってでも向こうに連れていくと、そう思え」
そこで先生の気配が消えた。「ねぐら」に行ったのだろう。顔を上げて確認する気にもなれない。どうせ朝には帰ってくる。
今はとにかく、休みたかった。
『レンジィ』
震える声がした。
黙っていたロージャが、今更のように口をきいている。
『レンジィ、君は』
「それ以上喋るな、ロージャ」
杖が黙り込む。
「頼む、しばらく、黙っててくれ。でないと」
『……』
「でないと俺、何を言っちまうか分からない」
ここで感情に任せて口を開いたらきっと、物凄く酷い事を言う。それを言っちまったら俺は自己嫌悪で死にそうになるだろう。そうなりたくないから黙っていたかった。
ロージャはそれっきり、何も言わなかった。俺も黙ったまま焚き火を消した。
酷く寒かったが、それが近づく冬のためなのか、それとも俺が冷やしているからなのかは、結局分からなかった。
この拠点には今、俺とロージャと先生しかいない。
「久しぶりだな、お前と二人だと言うのも」
拠点の焚き火の前、俺の隣で羽を伸ばしていた先生がそんな風に言う。今日はまだ「ねぐら」に入る気はなさそうだった。
先生は流石に俺達に混じって雑魚寝という訳にも行かないので(一応女性ではあるし)得意の空間を弄る魔法で「ねぐら」を作り、そこで睡眠を取っていた。「ねぐら」は俺達のいるところからは見えない。この島とは空間自体が繋がっていないらしい。
俺は先生の言葉に頷きながら、薪を焚き火に放り込んだ。
「そうですね、しばらくお会いしてませんでしたし」
「おかげでお前の情けない失態も見られた訳だ」
「……まだ傷が癒えてないので突っ込まないでくれませんかそこは」
うっかり俺がヘッドルーツを投げ捨てたことを言われている。……何で荷物が一杯だと拾ったもんを猛然と投げ捨てたくなるんだろう。それもこの島の「決まり」なのだろうが、実際に体感するとかなり痛い。
先生はしょげている俺を見てしばらくにやにやしていたが、突然何か思いついたように、こっちに身を乗り出してきた。
俺の上着にさしてある、赤紫色をした羽根を見つめて呟く。
「丁度半分くらいか」
「……もうそんなに?」
「塵も積もればなんとやら、だ」
それは昨日もらった先生の羽根だ。
こいつは俺に魔力を供給し続ける一方、周りに振り撒かれてる俺の力と、羽根に残っている魔力の量に反応して紅から青に変色する仕掛けが施されている。
羽根は今、中央まで紫色になっていた。上端はもうすっかり青だ。丸一日で半分となると少し進度が早い気がする。
「良くないことなんですよね、これ」
「当たり前だ。術の制御がまともに働いていないことになるのだからな」
「……ええと、どういう意味です?」
「お前、こちらに来て新しい術を覚えただろう。うろ……何とか言ったか? 向こうにいたときはなかった気配がするぞ」
「雨露霜雪、ですね」
俺が頷くと先生は「それだそれ」と言って続けた。
「今のお前からはほんの少しずつではあるが、その気配がにじみ出している」
「え?」
「お前の周りにいると少しだけ寒さを感じる。本当に僅かな冷却だから生物は影響を受けないが、呼気は粒子が細かいから大きく影響を受けたのだろう。息が凍るのはそのせいだ。それからこれは一昨日お前を運んだ時に気がついたことだが、今のお前は普通の人間より体温が下がっているぞ。気がついていたか?」
俺は黙って首を振った。息が白く凍るのは分かっていたが、体温までは注意が向いていなかった。最近妙に朝が辛いとは思っていたが、そう言うことか。
「それは俺が雨露霜雪の制御をしきれていないからですか?」
「制御が乱れていると言った方がいいかも知れんな。普段なら戦闘以外では抑えておけるはずの術が、上手く抑えられずに漏れだしているようだ。それは水や氷を操る術だろう」
「はい」
「となると一番身近な『水』として、呼気に含まれる水蒸気を優先的に凍らせている、という考え方もできる」
「身近な水、ねぇ。……体液は凍ってないですが、それはどう説明します?」
「それは不純物が多くて厳密に『水』と定義し辛いためかもしれん。あるいは、外に向かって術を発散しているから、お前の体そのものは術の対象外になっている、という可能性もある。どれも仮説に過ぎんがな」
そう言って先生は肩を竦めた。先生に分からないことが俺に分かる訳もない。だから俺も苦笑いするしかない。
「ともあれ、どのような形態だとしても術を使う時は魔力を使う時だ。不必要な術のために不必要に魔力を消費している。それが今お前が置かれている状況だよ。……しかし、本当の問題はもう少し前にあるようだな」
言いながら先生は、近くにあった枝を無造作に焚き火へ投げ込んだ。
ぱちん、と、枝がはぜる音がいやに大きく聞こえた。
「それは『何故今まで制御できていたことができなくなったか』だ。その術は今までは問題なく制御できていたんだろう?」
「ええ」
「となると、原因は術ではなく術者にあると見るべきだ。魔法や術の類は世界を騙すものだ。術者の持ちうるあらゆるものを使って世界の法則をねじ曲げる。その中で魔力と並んで最も必要とされるのは、術者の精神力だ。ここが乱れてはどうにもならん。……さて、レンジィ」
「何です?」
「お前、何をやらかす気だ」
思わず、息を止めた。
彼女が言わんとしていることに、その瞬間思い当たったからだ。
「何の、話ですか」
「とぼけるな。私には通じんぞ」
先生の声は、ほとんど叱責と言ってもいいくらいに鋭い。
「もう随分前になるが――私が以前、お前に『連れて帰ってやろうか』と言った時、お前がどう答えたか、覚えているか?」
「さぁ、いつの事やら」
「覚えていないのなら教えてやる。お前は『ここにいたらあの人に会う術が見つかるかもしれない』と言っていた。――お前の事だ、今もそれは変わっていないのだろう?」
変わるはずがない。
先生が言った事も本当は覚えている。
「先生」
「何だ」
「もしも以前亡くしてしまった大事な人が、実はずっと側にいたとしたら、貴女だったらどうします?」
「……それは、今のお前の事か? そのせいでまともに術も使えなくなっていると?」
先生の声には困惑が混じっていて、俺は思わず笑ってしまう。
先生は『彼女』の気配に気がついているんだろうか?
今は、俺も感じないけれど。
「ただの例え話ですよ。――で、どうなんですか」
俺が更に問うと、先生はふん、と息を吐いて答えた。
「決まっている。見守ってくれているのなら、それに恥じぬ生き方を心得るさ」
「恨まれていたとしたら?」
「同じことだ。生きて誠意を見せる。恨まれる理由が分かるのなら償うよう努力する」
「……それがもう、どうしようもない事であっても?」
「ああ。生者は死者の分まで生きる義務があると言うのが私の考えだ。大事な人の後を追って死ぬだとか一生死んだような生活を送るとか、そんな事は償いでも何でもない」
先生の回答を聞きながら、ああやっぱり、と、俺は落胆に近い気持ちを抱いていた。
先生はとても強い人だ。彼女みたいな回答は、当面俺には返せそうにない。
「……俺には無理ですよ、先生」
「何がだ。グラーシャの事か」
「…………」
「彼女を忘れろとは言わん。だが、もう何年経ったと思っている? いい加減立ち直るべきだろう。これでは彼女も浮かばれん」
そう、あの人はまだ浮かばれていない。
あの人はこちら側にいる。
先生はイライラとした様子で続けている。
「……あまりしつこいと、レンジィ。お前が執着しているものが本当に彼女の死なのかどうかを疑わざるを得なくなるぞ」
「どういう意味、ですか」
「お前がとらわれているのは本当に彼女の死なのか? 私には時々、お前が自分の感情にしがみついているだけのようにも見えるのだがな」
違う。
そう言いたかったけれど、声が出なかった。
先生が言った事は、実は俺もずっと恐怖を感じていたことだったからだ。
つまり、俺は本当はグラーシャを失った事を悲しんでいるのではなくて、ただ自分の感情に浸っていたいだけなんじゃないか、と。
その時の俺は、とにかく酷い顔をしていたらしい。
「――すまん、言い過ぎた」
先生が溜め息をつきながら言うのが、とても遠い声に聞こえた。周りの事にまるで現実感がない。色々な感覚が麻痺してしまったように感じる。
彼女が弟子である俺に詫びる事なんて滅多にないのに、ああ珍しく先生が謝っているな、とか、その程度にしか感じない。
こんな状態だったから、その後の先生の言葉も半ば上の空で聞いていた。
「……だが、忘れるなよレンジィ。もしもお前が妙な事を言い出したら、その時は」
先生はそこで言葉を切って、残りを心底嫌そうに続けた。
「その時は、お前の手足をへし折ってでも向こうに連れていくと、そう思え」
そこで先生の気配が消えた。「ねぐら」に行ったのだろう。顔を上げて確認する気にもなれない。どうせ朝には帰ってくる。
今はとにかく、休みたかった。
『レンジィ』
震える声がした。
黙っていたロージャが、今更のように口をきいている。
『レンジィ、君は』
「それ以上喋るな、ロージャ」
杖が黙り込む。
「頼む、しばらく、黙っててくれ。でないと」
『……』
「でないと俺、何を言っちまうか分からない」
ここで感情に任せて口を開いたらきっと、物凄く酷い事を言う。それを言っちまったら俺は自己嫌悪で死にそうになるだろう。そうなりたくないから黙っていたかった。
ロージャはそれっきり、何も言わなかった。俺も黙ったまま焚き火を消した。
酷く寒かったが、それが近づく冬のためなのか、それとも俺が冷やしているからなのかは、結局分からなかった。
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