False Islandのキャラブログ。日記ログとか絵とかネタとか色々。
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「お願い! ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから、見せてくれない?」
そんな風に僕が拝み倒すと、ハイダラは一瞬だけこっちを見た。が、すぐにまたそっぽを向いてしまう。両手には土に汚れた青い上着と革の小物入れがしっかと握られていて、なかなか離してくれそうにない。
僕はため息をついて、ハイダラの隣に控えているカディムを見上げた。カディムは相変わらずほとんど表情を崩さなかったけれど、困惑しているのはよく分かった。
ロルの探知によれば、レンジィの移動速度は日に日に遅れる一方で、詳細な位置は不明なままだが、僕らとの距離はかなり狭まっているらしい。この調子なら明日か明後日には相当接近できるとの事だった。
そして今日、それを裏づけるように彼の「遺留品」が見つかった。ここ一日か二日の間に忘れられたらしいそれらは、特徴から見てもレンジィのものと見て間違いなさそうだった。
目下の問題は、第一発見者のハイダラがそれらを掴んで離してくれない事だ。
あの馬鹿をそこまで心配してくれるのは嬉しい事なんだけれど……一応、ハイダラほど感覚が利かないとしても、僕もレンジィの痕跡を探っておきたい。
だからこうして、さっきから頼み込んでいる。
「……本当にごめんね、ハイダラ」
もう一度、ちゃんと姿勢を正してから、呼びかける。
「だけど僕、どうしてもそれを調べたいんだ。あいつが今どんな状況にあるのか、少しだけでも確かめたい。だからお願い、少しの時間でいいから、それを貸してもらえないか?
ちょっと調べたら、すぐに返すから」
そう言って僕は、ハイダラに向かって頭を下げた。
「…………」
ハイダラは無言のまま、何か考え込んでいるようだったけれど――少しして、しぶしぶ僕に上着と小物入れを差し出してくれた。
「ありがとう。少し、借りるね」
受け取って、まずは上着をざっと見る。だいぶ土や埃で汚れてはいるけれど、血の染みは見当たらない。少なくとも、この上着を置いていった時点では怪我をしてはいなかったようだ。それに少しほっとする。
ただ、襟の回りに細かな黒い羽毛がくっついているのが気になるけれど……これは一体何なんだろう。今考えても仕方がないことだろうから、後回しにする。
一通り上着を見た後、今度は小物入れの方を調べた。中には細々とした品がほぼそのままの状態で残っていた。さして高価な物は入っていないけれど、誰かに持っていかれなかったのは幸運だったと思う。
入っていたのは手のひら大の魔術の本(持ち運び易いしさっと調べるのに丁度良いとレンジィは言っていた)、最近覚えた術の呪文と起動方法を書いた紙切れが数枚、小さな手鏡が一枚、魔方陣を彫った鉱石の護符が一つ。
どれもそれなりにレンジィが大事にしていたものだったと思うけれど、こうやって放置されていた所からして、彼にとっては既に「どうでもいい」物になってしまっているのだろう。
「……うん、もういいよ。ありがとう」
言いながらハイダラに上着と小物入れを差し出すと、彼はそれらを掴んでまた向こうを向いてしまった。僕らのいる山岳地帯から南側に広がる床と、その更に向こうの平原の方を、身じろぎもせずに見つめている。
あいつがそっちの方にいるのは僕にも感じ取れたから、黙ってハイダラと一緒にそちらを眺める。カディムも何も言わず、隣に控えている。
ロルの見立ては正しいだろう。じきに僕らが追いつくのは目に見えている。ハイダラの勘の良さなら、ある程度近くまで寄ればすぐに見つけられると思う。
さて、そのとき僕は、どうしたらいいのか。
(しっかりしろ、あいつを連れ戻すんだろ)
(ぶん殴ってでも連れ戻したいんだろ!)
大きく息を吸って、思わず目を閉じた。
僕はレンジィに何と言うべきか、未だにちゃんとまとめられずにいる。
あいつに会うまで、もうそんなに時間は残っていないのに。
そんな風に僕が拝み倒すと、ハイダラは一瞬だけこっちを見た。が、すぐにまたそっぽを向いてしまう。両手には土に汚れた青い上着と革の小物入れがしっかと握られていて、なかなか離してくれそうにない。
僕はため息をついて、ハイダラの隣に控えているカディムを見上げた。カディムは相変わらずほとんど表情を崩さなかったけれど、困惑しているのはよく分かった。
ロルの探知によれば、レンジィの移動速度は日に日に遅れる一方で、詳細な位置は不明なままだが、僕らとの距離はかなり狭まっているらしい。この調子なら明日か明後日には相当接近できるとの事だった。
そして今日、それを裏づけるように彼の「遺留品」が見つかった。ここ一日か二日の間に忘れられたらしいそれらは、特徴から見てもレンジィのものと見て間違いなさそうだった。
目下の問題は、第一発見者のハイダラがそれらを掴んで離してくれない事だ。
あの馬鹿をそこまで心配してくれるのは嬉しい事なんだけれど……一応、ハイダラほど感覚が利かないとしても、僕もレンジィの痕跡を探っておきたい。
だからこうして、さっきから頼み込んでいる。
「……本当にごめんね、ハイダラ」
もう一度、ちゃんと姿勢を正してから、呼びかける。
「だけど僕、どうしてもそれを調べたいんだ。あいつが今どんな状況にあるのか、少しだけでも確かめたい。だからお願い、少しの時間でいいから、それを貸してもらえないか?
ちょっと調べたら、すぐに返すから」
そう言って僕は、ハイダラに向かって頭を下げた。
「…………」
ハイダラは無言のまま、何か考え込んでいるようだったけれど――少しして、しぶしぶ僕に上着と小物入れを差し出してくれた。
「ありがとう。少し、借りるね」
受け取って、まずは上着をざっと見る。だいぶ土や埃で汚れてはいるけれど、血の染みは見当たらない。少なくとも、この上着を置いていった時点では怪我をしてはいなかったようだ。それに少しほっとする。
ただ、襟の回りに細かな黒い羽毛がくっついているのが気になるけれど……これは一体何なんだろう。今考えても仕方がないことだろうから、後回しにする。
一通り上着を見た後、今度は小物入れの方を調べた。中には細々とした品がほぼそのままの状態で残っていた。さして高価な物は入っていないけれど、誰かに持っていかれなかったのは幸運だったと思う。
入っていたのは手のひら大の魔術の本(持ち運び易いしさっと調べるのに丁度良いとレンジィは言っていた)、最近覚えた術の呪文と起動方法を書いた紙切れが数枚、小さな手鏡が一枚、魔方陣を彫った鉱石の護符が一つ。
どれもそれなりにレンジィが大事にしていたものだったと思うけれど、こうやって放置されていた所からして、彼にとっては既に「どうでもいい」物になってしまっているのだろう。
「……うん、もういいよ。ありがとう」
言いながらハイダラに上着と小物入れを差し出すと、彼はそれらを掴んでまた向こうを向いてしまった。僕らのいる山岳地帯から南側に広がる床と、その更に向こうの平原の方を、身じろぎもせずに見つめている。
あいつがそっちの方にいるのは僕にも感じ取れたから、黙ってハイダラと一緒にそちらを眺める。カディムも何も言わず、隣に控えている。
ロルの見立ては正しいだろう。じきに僕らが追いつくのは目に見えている。ハイダラの勘の良さなら、ある程度近くまで寄ればすぐに見つけられると思う。
さて、そのとき僕は、どうしたらいいのか。
(しっかりしろ、あいつを連れ戻すんだろ)
(ぶん殴ってでも連れ戻したいんだろ!)
大きく息を吸って、思わず目を閉じた。
僕はレンジィに何と言うべきか、未だにちゃんとまとめられずにいる。
あいつに会うまで、もうそんなに時間は残っていないのに。
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