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False Islandのキャラブログ。日記ログとか絵とかネタとか色々。 キャラロールがぽんと飛び出ますので苦手な方はご注意を。



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 遺跡外に出た日の夕刻。
 久々に向かった俺の拠点には、何故か明かりがついていた。……窓に人影が映った。先客がいるようだ。
 ここは俺が外に出た時に使っている小屋だ。最近はハイダラの「木陰」に泊まる事がほとんどだから、ここしばらくは無人だった。
 なのに、先に誰かがいる。

(……まさか、もう来たのか)

 鍵は魔法でかけてあるから勝手に入るには魔法の心得がいる。そしてここは島の端、用事がなければまず来ない場所だ。
 つまり、中にいる奴は俺に用があって、俺以上に魔法が上手い。
 心当たりは一人しかいない。
 扉を軽く押す。案の定開いていた。中に入りながら、俺は口を開いた。

「……不法侵入ですよ、先生」
「おや、来るという連絡はしておいたはずだがな」

 彼女は相変わらず若々しい。小柄で起伏の少ない体は十代だと言っても通用しそうだ。瞳も髪も鮮やかな深紅で、翼だけが暗い紅と薄茶をしている。
 少女の姿をした翼人は、外観に似合わない尊大な口調で続けた。

「それに『不法』というのはおかしいだろう、ここに法律などない。あるのは独自の理と冒険者達の暗黙の了解だけだ。違うか?」
「……貴女にはかないませんよ、まったく」
「ほざけ。お前が私にかなったことなんぞ一度もなかろうに」

 そんな事を言って、また笑う。
 辛辣な言葉遣いも相変わらずで、俺は苦笑いしながら肩を竦めた。

 フェデリア・ガルサ・ロルクナート、普段フェダかロルで通っている彼女は、俺の魔術の師だ。本名は「長いから嫌だ」と言ってまず名乗らない。
 翼人である彼女は人間よりずっと長い時間を生きる種でもある。見た目こそ若いがもう九十を越えていて、それでも種族としては若いというのだから驚く他ない。今の彼女は、いつもは身の丈ほどもある翼を術で縮め、小屋の中を窮屈そうに見回している。

「しかし随分と狭苦しいところを拠点にしているのだな。飛んできて驚いたぞ、まるで犬小屋じゃないか」
「……そこまで言われると俺も流石に傷つきますよ先生。それに、ここにはほとんど住んでません。最近は仲間のところに泊まってます」
「ああ、あの白くてきらきらした。今も一緒に?」
「ええ」

 先生は一度、立体映像だけでこっちに来た事がある。その時の俺はハイダラと組んだ後で、先生は俺に会った時にこっそり彼を見ていたらしい。まだ直接の面識はないがハイダラには一応「魔術の師がいる」事は話してある。
 しばらく彼女は何か考えていたが、やがて、にたっ、と笑って俺の方を見た。

「ふむ、ならば挨拶に行かねばな」
「えっ?」

 挨拶? 単に俺に会いに来ただけじゃなかったのか?
 そう思って聞き返す俺に、先生はにやにや笑いを顔に貼りつけたままで続ける。

「私はしばらくこちらに滞在するつもりだからな、お前の仲間とも顔ぐらい合わせるだろう。ならば挨拶をしておくのが筋というものだ」
「た、滞在?」

 待った、そんな事聞いてないぞ。

「……どれぐらいのご予定なんですか?」
「聞くまでもなかろう? 私の気が済むまでだ。さ、そうと決まれば行くぞ」

 早速動き出そうとする先生に、俺は無駄と知りつつ抵抗を試みた。

「先生、俺ここに荷物取りに来てて、それから買い物行こうかと思ってて」
「買い物なんぞ後でもできるだろう。さっさと荷物とやらを持ってこい、出発するぞ」

 やっぱり無駄だった。おまけに先生は「遺跡外の買い物がいかに苛烈なか」と言う事も知らないのだ。見逃してもらえる訳がない。
 俺は黙って頷くしかなかった。



『カディムー、今日は夕飯何作ってるの?』
「海老と貝の香草蒸しでございます」
『お、ちょっと豪華?』
「はい、市で食材を揃えることができましたので」
『遺跡外だしね。なかなか中じゃ調達できないしなぁ』

 そんな事を言う僕に頷きながら、カディムは鍋の火加減を見ている。いつもならここでレンジィが僕に「邪魔するな」とか何とか言ってくるのだけれど、今日は彼がいないので好き勝手に話しかけていた。
 本当は邪魔しちゃ駄目って思うんだけどね。何だか彼に言われると腹が立つし、何よりカディムの料理をしている姿が面白いから、つい話しかけたくなる。

『それにしても遅いな、レンジィの奴。もうじき夕飯ができるってのに』
「まだ買い物を続けておいでなのかもしれませんね。市は大層込み合っておりましたから」
『ならいいんだけどね、変なとこで迷ってなきゃいいんだけど』
「――ふふ、レンがいないと寂しい?」

 いつの間にかこちらに移動していたハイダラがそんな事を言って来たので、僕は慌てて否定した。

『さ、寂しいとかそんなんじゃないさ! 全然!』
「本当?」
『本当本当! ただ、その、最近あいつぼんやりしてるから、ちょっとぐらいは心配してやってもいいかなって思っただけ!』

 言い訳代わりにそう言ってから、まずかったな、と僕は後悔した。
 ハイダラの表情が曇ったからだ。

「……そうだね、わたしも少し、気になっている」

 あいつがおかしいのは数日前からで、本人も自覚はしているらしい。息が凍ったり、彼の周りだけ少し寒かったり、体温が少し低くなっていたりしている(これは僕が彼の得物であるからこそ知っているのだけれど)。
 だから、僕は

「――!」

 その時、ハイダラとカディムがほぼ同時に上を見た。
 緊張した様子ではないけれど、少し困惑しているような、そんな気配だった。

『どうしたの?』
「いや、レンが帰ってきたのかと思ったのだけれど……カディム、一人多くはない?」

 独り言のように呟いてから、ハイダラがカディムの方を見る。僕もつられて視線を彼の方に向ける。
 カディムは恭しく頷いて答えた。

「レンジィ様ともうお一方、どなたかがいらっしゃっておいでの様子です」
『え、あいつ帰って来てるの?』
「ええ」
「もうこの木陰には来ているはずだ。来る途中で誰かに会ったのかもしれないな、少し不思議な気配の人が側にいる。……二人とも姿が見えないのが、気になるんだけれど」

 そう言ってハイダラが首を傾げた、その直後。

「わああああ!」

 いきなり叫び声が頭上から降って来た。

「!」
『な、何だ?』

 ハイダラがすぐに身を起こし、カディムが鍋の火を消しながら身構える。動けない僕と言えばただ頭上に注意を向けるしかない。
 叫び声、というか喚き声はまだ続いている。……聞き覚えがあるな。
 僕が思い出すより早く、ハイダラが反応していた。

「レンの声だ」
『あの馬鹿、一体何に巻き込まれて――!』

 今度は大きな羽音がした。鳥の羽ばたきに似ているが、音が大きすぎる。
 と、その直後。

「うぉわぁっ!」

 木陰のすぐ隣に何かが落ちて来た。青い服に癖の強い黒髪をしたそいつは、落ちた時に打った所をひとしきり痛がった後、恨めしそうに上を見上げた。
 それからいつもの彼らしくない敬語で怒鳴る。

「い、いきなり何するんですかっ、貴女って人は!」
「やかましいぞ、二本足でちんたら歩くより余程速いだろうが。現にもう到着しているじゃないか」
「だからって亜空間飛んで移動するこたないでしょうに! そう言う魔力の無駄遣いはやめて下さいよ本当!」
「無駄遣いとは何事だ。お前も魔法使いの端くれなら空ぐらい飛んでみせろ」
「魔女じゃないんですから無理ですって!」
「私とアダマースが作ってやったあの杖にでもまたがればいいだろう」
「気色悪い事言わないで下さいよっ、またがりゃいいってもんじゃないでしょうが!
 ……ああ、もう!」

 青い服の方――レンジィが、盛大に溜息を吐いて立ち上がった。その隣に、優雅なぐらいゆったりと、紅い影が降りてくる。
 レンジィは僕達がぽかんとしているのを見つけると、申し訳なさそうに頭をかいた。

「……あー、ごめん、皆。本当は歩きで来たかったんだけどこの人がどうしても飛んで行くとか何とか言い張って」
「私をガキみたいに言うんじゃない」
「先生はちょっと静かにしてて下さいお願いですから。……えーと、ハイダラ、カディム。この人は俺の魔法の先生の、フェダ・ガルサ・ロル先生だ。……先生、あの人らは俺の仲間のハイダラと、その従者のカディムです」

 ハイダラが目を瞬く気配がした。彼は既に何度かレンジィから話を聞いているはずだ。カディムはすぐにハイダラの隣に控えて跪いていた。……やっぱり凄く様になってるなぁとか言ったら怒られるかな。
 一方ロルはレンジィの紹介の後、もっともらしく頷いて前に出た。

「ハイダラとカディムとやら、話は聞いているぞ。まずは私の馬鹿弟子が世話になっている事に対して礼を言わせてくれ。ありがとう」

 それから彼女は翼を揺らして、笑いながら続ける。

「ここに押し掛けたのは他でもない、しばらく私もこちらに滞在するから挨拶をしておこうと思ったからだ。私の事はフェダでもロルでも好きに呼んでくれ。では、宜しく頼むぞ」

 そう言うロルの前に、ハイダラがそっと歩み出た。
 柔らかく笑って口を開くのが僕のところからも見える。
 
「……ふふふ、礼はいらない。だって、レンに私が世話になっている、の間違いだもの。初めまして、フェダ、いや、ロルの方が良いのかな? 私はハイダラ。ようこそ、狂った島を楽しむ地へ。それに、木陰に来てくれて嬉しいよ。こちらこそ、よろしく」

 ハイダラは手を差し出しながら挨拶していたけれど、すぐに何か思いついたようにこう続けた。

「ねえ、握手のあと、あなたの羽根を触っても良い?」

 カディムがぎょっとする気配。それが僕にも伝わって来て、思わず笑い出しそうになる。
 言われたロルはと言えば、一瞬きょとんとしてから、すぐに笑い出した。何だか嬉しそうだ。

「ははは、構わんよ。好きに触ると良い。……代わりと言っては何だが、私にはあなたの姿と種族がとても興味深い。後でその事についてゆっくり話をしてみたいんだが……ひとまず、今は握手が先だな」

 言いながらロルがハイダラの手を握り返す。
 その時ほんの一瞬、彼女が僕を見た。同時に僕だけを狙った念話でこんな声が飛ばされて来る。

『……来てやったぞ。なかなか面倒そうな状況になっているな』

 ああやっぱり、と僕は一人で納得する。
 しばらくは色んな意味で大変な日々になりそうだ。
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